パパにとっては、これも危機一髪の物語……父親の威厳を守るって、本当に難しいんだよね。本当は守るような威厳より、等身大の自分を見せることの方が大事だよねって話。



「どう、そっちの様子は? やっぱり來々ららは、パパがいないから寂しがっているかな?」

「……伊尾いおは、絶対に外れる予想から始めるよね?」

「えっと……紗里さり?」


「とりあえず、良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」

「……良い知らせ……から、かな?」


來々ららがめでたく、稀来と付き合うことになったって」

「ブフフッ」


「通話越しとはいえ、汚いよ」

「……それのドコが良い知らせなのさ!」


「良い知らせじゃない? ドコかの馬の骨が彼氏より、よっぽど幸せにしてくれるんじゃない?」


「……寝るのは『お父さんじゃなきゃイヤ』って言っていた來々ららはドコに……」

「それ、一瞬だったけれどね」

「ひどくない?!」


「残業、残業。出張、出張でで家に居る時間が少なかったんだから、仕方ないんじゃない?」

「そ、それを言われると……。でも、來々の心臓の手は……どうしてもお金が……」


「あれは、來々も感謝しているって言っていたじゃない。でも、手術を後押ししたのは、稀来だからね」

「う――。分かった、分かったよ。それで、悪い知らせって?」


「隠してもいつか、來々が言うだろうから。ストレートに、結果を受け止めて」

「は?」

「LINKに届いたメッセージを、伊尾に送るからね?」




________________


KIKI:母さん、ごめん。一線、こえちゃった。


________________



「は!?」



________________


RARA:ママ、ちゃんと成人まで待ったからね。幸せなの、分かる気がする。私の心臓、今も稀来のこと考えただけで、トクトク言うの。稀来にこの心臓の音、聞いてもらうだけで、また高鳴って。好きな人と一つになれるのって、こんなに満たされるんだね。


________________



「ふぁっ?!」

「……私が言う成人は、二十歳って意味だったんだけどね」

「ちょっと、沙里? これは、マズいって。ちゃんと、節度ある付き合いを――」



________________



RARA:パパとママが愛しあっているの、たまたま見ちゃって。何が良いのか分からなかったんだけれど。パパがイジめられているのに、喜んでいるように見えたし。


________________



「……い、いっそ、殺して……」



________________


RARA:でも、あれがきっかけで、

    稀来と血が繋がっていないって知れたし。


________________




「ピロトークの時だよね」

「解説しなくて良いよ!」




________________


RARA:私ね、稀来ききと幸せになるの。絶対、誰にも目移りなんかさせないからね!


________________





「……えっと――」

「この二人、というか來々ららよね。來々の気持ちを、押し潰すことなんて、私はできないけど? 伊尾はできるの?」


「ず、ずるくない? その言い方?」

「ズルいのは、私に全部一任した伊尾だと思うけど」


「そ、それは……」

「ま、節度はもつように。それは伝えようと思うよ。だから伊尾は、泣かずにちゃんと祝福するんだよ?」


「な、泣くわけないだろ!」

「はいはい、まったく説得力ないケドね」





■■■





KIKI:父さん、母さん、ここまで育ててくれてありがとうございます。心配をかけないように、ちゃんと自立して、來々ららを幸せにするから! 今は見守ってください。むしろ、たくさん相談をすると思います。改めて、よろしくお願いします!


RARA:パパ、ママ。いつも応援してくれて、本当にありがと! 私の心臓が動いているの、パパのおかげだよ! 絶対に稀来ききと幸せになるから! そしてパパとママのことも、絶対に幸せにしてみせます!





【今度こそ、おしまい】

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KIKI × IPPATU? ~危機一髪、くぐり抜けたと思っているのは兄だけだった件について【短編賞創作フェス】 尾岡れき@猫部 @okazakireo

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