サツミコレクション血合骨

釣ール

ストレス社会を生きる者達へ

 同族同士になると好意と嫌悪、そして敵意の爆発が常に付き纏う。


 やつれてまで生きるこの世は地獄であり世紀末。

 食事も現代は行えても、未来まで補える保証はない。


 伝統料理人として教育され受け継いできたサツミ一族達のスキルは倫理によって危うく壊れやすい橋を常に渡らせられる生活を送っている。


 ただ、サツミ一族達は皆口を揃えてこの料理人としての生活に苦言を呈したことはない。


 恨んでいるのだ。

 進展のない停滞だらけの歴史を食い繋ぐ我々人類を。

 それ故に、損をし続けストレスを不当に負わされてしまっている人々が無料で泊まれるホテルをサツミグループは提供することにしたのだ。


 勿論無料には理由がある。

 そのヒントを一つ提供しましょう。



【獲物を定める薩摩握 実乃梨さつまいり みのり


 女子高生として過ごす人間の中では通常や特別とはかけ離れた生活を送る者もいるだろう。


 取り留めのない世間話をお洒落しながら話す女子高生とすれ違った実乃梨は真っ先に獲物を狙いに行く。


 お年寄りの中で大声を上げ、唾と暴言を吐く人間を探す。

 出来れば同情の余地が全くない人間であれば最高の料理となる。


 こ、これは実乃梨の話である。

 別に何の変哲もない悪口なのだから。


 兎に角獲物を見つけた実乃梨来は孤立する瞬間を今日も狙う。

 これでも単位はしっかり取っている。

 サツミ一族は仕事と学業、興行等の両立をする為に交代制で獲物を狙うのだ。


 今回は実乃梨の番で、やっと仕留められる瞬間でもある。

 料理は出来ても獲物を仕留められるようになるには初の実践。


 やっと獲物が罠にかかってくれた。

 実乃梨は誰にもみられないよう用心しながら仕事へ取り掛かった。




 ***



「今回はロールキャベツを召し上がれ。」


 子供達やご老体達をいつものように労る実乃梨。

 サツミグループも元は貧乏で子宝にも恵まれず、ハンデがあればすぐに馬鹿にされる人間の負の世界からここまで経営を維持し続けた。

 人間に傷つけられた人間の為に実乃梨達は料理を作る。


 何度も偽善者と言われ、何度も一族は見下されてその度にへこたれてから立ち上がり傷ついた人々を癒してきた。


 このロールキャベツもなるべく最高級料理店で培ってきた技術を使っている。

 安く制限のある食材だからこそ献立こんだての作り甲斐がある。


 ホテルに住む人達の笑顔や美味しそうにロールキャベツや他の料理を食べる姿を糧に実乃梨達サツミ一族は今日から明日、そして未来を生かされていく。

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