万里藻ちゃんの運動会

運動会での惨事

「赤組がんばれぇぇぇ！　赤組がんばれぇぇぇ！」

　万里藻（まりも）ちゃんは誰よりも元気いっぱいに声を張り上げて赤組を応援していた。

　万里藻ちゃんのクラス五年四組は赤組だ。

　今はクラスメイトの男の子がピストルの音と共に、百メートル走を走り始めたところだ。

　万里藻ちゃん達が懸命に声援を送っていると、どういうわけかクラスメイトのぽっちゃり君が万里藻ちゃん達のクラスが座るコーナ―付近に突っ込んでくるではないか。

　声援が悲鳴へと変わる――

「エリちゃん危ない！」

　万里藻ちゃんは危機一髪、隣の友達エリちゃんを突き飛ばして逃がすことに成功した。

　でも、自分の回避は間に合わずに、万里藻ちゃんはぽっちゃり君の体重を右足に受けて骨折してしまい、そのまま気を失ってしまう。

　その後、会場が騒然となるなか、万里藻ちゃんとぽっちゃり君は救急車で病院に運ばれていった。

　万里藻ちゃんは救急車の中で気絶しながらも、幸せそうに何かを呟いていた。

「ハンバーグ……ハンバーグ……パイナポー……うんまっ」

　しかしながらこの日、万里藻ちゃんはママのお弁当を食べ損ね、病院のベッドで一日中機嫌が悪かった。

　しかも隣のベッドにはなぜか原因を作った張本人のぽっちゃり君がいて、万里藻ちゃんにずっと楽し気に話かけてくるので、またイラっとする万里藻ちゃんであった。

　了