万里藻ちゃんの運動会

八万

運動会のお弁当作り


「ママ、私の好きなハンバーグいっぱい入れてねっ」


 万里藻まりもちゃんはママのエプロンを引っ張りながら上目遣いで言う。


「はいはい、いっぱい入れたからお昼に一緒に食べましょうね」


 ママはこれが計算なのを分かっているが、それがまた可愛くて笑顔になる。


「あ、でも、ピーマンとシイタケだけは絶対に入れないでね?」


「だめよ好き嫌いばっかりしちゃ、大きくなれないわよ?」


「……ふん、ピーマンとシイタケ食べるくらいなら死んだほうがましよ!」


「ふふふ、なにそれ。天国のパパが聞いたら怒っちゃうわよ?」


「パパ……」


 万里藻ちゃんがうるうるしだしたのでママは慌ててしまう。


「……あっ、そうだ! パイナップル安かったからタッパーにいっぱい入れようね」


「ぬほぉぉぉっ! パイナポー! パイナポー! パイナッポー!」


 万里藻ちゃんはパイナポーのダンスを突然踊り出した。


 とっても切り替えが早い女の子だ。


「ちょっとなにそれ!? 学校でそんな変なダンスしないでよ?」


「しないよ? 私、小学校ではクールな少女なんだから」


「家でもちょっとは大人しくしてくれたらいいのに……」


 ママは呆れて、万里藻ちゃんの真顔をしげしげと見つめる。


「ママに似たんだからしょうがないでしょっ」


「はぁぁぁ? またそんな生意気なこといって!」


 ママは包丁をキランとさせ目を見開く。


「ひっ!?」


 万里藻ちゃんは回れ右で居間に逃げ出した。


「まったく口が悪いんだから、ほんと誰に似たのかしら」


 ママは溜息を吐きながらお弁当作りを再開するが、すぐに機嫌のいい鼻歌が流れ出す。


 万里藻ママはとっても切り替えが早かった。


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