ライブ会場でのアクシデント。焦って危機一髪だった話。

榊琉那@屋根の上の猫部

ちょっと想定外だったアクシデント

 ライブを観るのが好きな自分は、ライブには何度となく行っていたので、

アクシデントに遭遇した事は何度となくある。

 自分は地図を見るのが苦手だったから、

初めて行くようなライブ会場はかなりの確率で道に迷っていた。

  今のようにiPhoneで地図検索なんてものは当時なかったからなぁ。

特に小さなライブハウス、開演ギリギリまで探したこともあったっけ。


 しかしながら、自分の記憶に残っているアクシデントで、

すぐに思い出すエピソードがある。


 日本でも指折りのギタリストが結成していたロックトリオ、

腕利きの3人が揃っていたこのグループは、

マニアから日本最強だと言われていた。

 ライブ映像を見た時は、

何で今まで聴いてこなかったんだろうと後悔するくらい、

凄いパフォーマンスを見せていた。別に派手な事はしていない。

実力者たちの演奏は、ただ演奏しているだけでカッコいいものなのだと。


 そのグループが解散するというので、今までライブを観る機会が

なかった自分は、都合をつけてチケットを確保した。

 場所は日本武道館。その時は迷っても大丈夫なように

かなり早い時間から行動し、実際、開場時間よりもかなり早い時間に到着していた。

大きな会場なので、入場するにも時間がかかる。

だから余裕を持って会場にいったんだよね。


 開演時間にはまだ早いけれど、トイレも済ましてから座席でじっと待っていた。

 大きな会場のライブのチケット争奪戦には慣れていなかったから、

座席はかなり後ろの方になる。姿は見えにくいかもしれないけれど、

生の音を体験出来るだけでも満足かなと。


 開演時間が過ぎて会場が暗くなる。いよいよ始まるのか。

 イントロダクションとして流れてきたのは、ラベルの「ボレロ」。

なかなか粋な演出じゃないか。

 初めは静かに曲が流れていく。そして早く演奏が始まらないかとドキドキする。


 そんな中、後ろから肩を叩かれる。何だ?と思ったら、


「席、間違っていませんか?」


 え?、ちゃんと何度も座席番号は確認したぞ。

もう一度チケットを出して確認する。確かに番号は間違いないのだが。


「エリアが違いますよ」


 なんと座席番号は合っているのだが、エリアが違うのだという。

何という失態。急いで席を離れて正しいエリアに向かおうとする。

 しかし、どこから行けばいいのか。焦りながら探す。

もう暗くなっているから、無事にたどり着けるのか?


 そうこうしているうちに、「ボレロ」の曲が進んでいく。

 ご存じの通り、「ボレロ」は静かな展開から

少しずつ盛り上がった展開になっていく。ヤバい、盛り上がり始めてきた。

 早く正しい席にたどり着かないと、という気持ちで一杯だった。

ヤバいヤバい、間に合うのか?


 正直、どのように場所を見つけたかは詳細は覚えていない。

おそらくスタッフに入場口を聞いて、急いで向かったんだと思う。

無我夢中だったんだろう。いつものように道に迷っていたら

アウトだったんだろうが、運よく場所をすぐ見つけられた。

 すみません、すみませんといいながら通らせてもらう。


 「ボレロ」は、もうサビの部分が流れている。本当にギリギリのところで

本来の場所に着いた。危ない、危ない。まさに危機一髪だった。


 席について数十秒後、「ボレロ」はフィナーレを迎えて終了。

 そしてすぐさま、アーチストの演奏が始まった。

いや、始まる前に力尽きそうだったよ。


 

「ボレロ」に合わせての展開なんて作り話でしょって言われそうだが、

れっきとした事実です。今となっては証明のしようもないですけどね。

 まあ、ただそれだけの話。ちょっとした思い出話でした。

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