バッドタイミング

愛須どらい

プロローグ?

「ハッ…!?」


 オレは、目を覚ました。


「えっ…!?」


 なぜかオレは、見渡みわたす限り続く草原にいる。


「(バカな…!?

  オレは死んだはずじゃ…!?)」


 自分の身体を確認しようとしたオレは、

そこで初めて違和感いわかんに気づいた。


 身体の感覚が無い。


 いや。


 


「いやあ、危ないところじゃった!

 まさに危機一髪ききいっぱつというやつじゃな!」


「!?」


 突然とつぜん、オレの目の前にジイさんが現れる。


「ここは、いわゆる死後の世界。

 そしてワシは、お前達の言うところの神様にあたる存在じゃ。

 おどろいたかの?」


 神様と名乗ったジイさんがニコリとする。


「死後の世界…?

 じゃあオレは、やっぱり死んだんですか…?」


 オレは、神様にたずねる。


「そういうことじゃ。

 その証拠しょうこに肉体も無いし、

 たましいで考えたり見たりしておるから、

 360度好きな方向が見られるじゃろう?」


 神様が言う。


「(本当だ…!)」


 オレが意識を真上に向けると、

けるような青空が見えた。


「実はお主が死んでしまったのは、

 こちらの手違てちがいでのう…。

 いや、まずは謝らねばならんかったな。

 本当にスマン…!」


 神様が申し訳なさそうに頭を下げる。


手違てちがい…?」


「そうなんじゃ。

 ただ、だからと言ってそのまま生き返らせることもできん。

 お主の肉体は死んでしまったわけじゃからな。

 …じゃが、あきらめるのは早いぞ?」


 神様がニヤリとした。


「と言うと?」


「肉体は死んでしまったが、

 たましいのほうは、

 この通り完全に消えてしまう前につかまえることができた。

 そこで、そのたましいを別の世界に生まれ変わらせてやろうというわけじゃ。

 流行りの『異世界転生』というやつじゃな。

 …ちなみに拒否権きょひけんは無いぞ?」


 神様はそう言ってうなずくと、

オレのほうに向かって両手をかざした。


「流行り?

 イセカイテンセイ?

 ちょ…、ちょっと待ってください…!」


 オレがいた世界は、

戦っていた魔王まおうはどうなるんですか!?


 そう質問する前に、

オレの視界は光に包まれた。




―完―

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バッドタイミング 愛須どらい @cck230da

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