第2話 ガンド
現在時刻は午前7時、高校の始業時間は8時半だが空雲白斗《からぐもはくと》は家を出る、別に早めに学校に行きたいのではない、家から特別遠い訳でもない普通に歩けば30分も掛からずつける距離だ。
最も、普通に歩ければの話だが....
「またか...」
住んでいる団地区画を抜けると川を隔てて一軒家が立ち並ぶ住宅地がある、もちろん川を渡るための橋があるのだがその上に奴はいた。
黒い影のような人形の物体...目があるはずの箇所には白い点のモヤがかかっておりここが目だぞと主張している。
「ガンド」奴らはそう呼ばれている、いつからいるかは知らない、世界中に存在しているが正体は不明、宇宙人だとかUMAだとか騒がれてはいるがあまり問題視はされていない。
なぜなら....
「あっ!がんどだ!」
「ほんとだがんど!がんど!」
「がんどたおししよーぜ!」
登校中だろうか、ランドセルを背負った少年3人がガンドをみながら興奮気味にはしゃいでいる、その中の一人がガンドの足を蹴りつけ始めた、続いて他の二人も蹴りつける。
ガンドは何の抵抗もせず三人の蹴りによってまるで人形が倒れたかのように無機質に倒れ込む、少年達はそれでも蹴り続け暫くすると飽きたのか疲れたのか、蹴るのを辞めて歩き始めた。
少年達が去ると、ガンドはまるで何事もなかったかのように無機質にしかし無駄のない動作で立ち上がるとその場に立ち尽くしている。
...そう奴らの大半は弱いのだ、弱く、単調で無機質でいつの間にか現れいつの間にか消えている、まさに影のような存在。
先程の少年達も珍しい石をみつけ蹴って遊んでいたくらいの印象しか持っていないだろう。
そう...奴らは弱い...ではなぜ僕はこんなにも奴を警戒しているのだろう、奴は丁度橋の左端、しかも川側を向いている、僕は右端、奴から一番離れた場所を速くしかし音を立てぬように走り抜けようとする。
僕と奴が丁度対面に立った時だった、奴は、ガンドは先程の無機質な動きとは思えない程滑らかにそしてスピーディーに僕の方を振り返った。
「っ...!!!まずい!!!」
僕は走り出す、するとガンドも走り出していた、ガンドに交通ルールの概念はない道路を突っ切り信号を無視し僕に向かって一直線に....!!!
このガンドの足はそこまで速くはないらしい小学生の全力疾走くらいだろうか、しかし歩いていては追いつかれる!!!
僕は一生懸命走る、元々足が速い方ではないが流石に小学生に負けはしない。
突き当りを右に、裏道を抜け出勤中のサラリーマンから変な目で見られても構いやしない、そのまま坂を登り学校に滑り込んだ。
....危なかった、今日は一人だけだった足も遅かったし...現在時刻は7時23分かなり早めに着いてしまった。
「はぁはぁ...ふぅふぅ...すぅはぁ...よし、おはようございます」
とはいえ、こんな時間に誰もいな...
「おはよう、空雲君」
「...え」
一瞬、世界が止まったかと思うほどの静寂...もちろんそれはこんな早い時間に僕以外が登校していることもあったけれど何よりも...
「お、おはよう姫咲さん...」
「えぇ、おはよう」
眼の前の女子に目を奪われたことのほうが要因だっただろう
デーモンギア 松丑 @kusahune
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