『闇のはじまり』

ヒニヨル

『闇のはじまり』

白々しい明るさが

山の向こう側に堕ちていく


墨を流し込んだような

淡いだいだい、宙の色

何か言いたげな白い雲たち


微笑した月は美しく

その裏にぼうのシルエット


せまい路地や電柱のうしろから

次第にどこからも現れる

私の影も重なって

色が深まっていく


この中にたたずむと

どうして心地が良いのだろう

私のすべてを

許してくれる気がする


一際、月が煌々と感じる

世界を覆っているものが

見えないくらい

暗いせいかもしれない


今宵はしがみつくと折れてしまいそうで

私は仰向あおむくのをやめた


息をひそめると耳が心地良い


ひらいていても

この目は役に立たない

私はそっと視界を閉じた。



     Fin.





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『闇のはじまり』 ヒニヨル @hiniyoru

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