危機一髪

UD

第1話

「風が気持ちいいな!」

「ああ。フーリのご機嫌がいいんだろ」

「もう、そんな事言わないの、マハ。ちゃんと様をつけなさい!」

「ふん。お前は今日も良い子ぶるんだな、ハーラ」


 一面に緑が広がり、その中に白い花が咲き乱れている。

 その緑が風になびき、いく筋も光に反射した線が走る中、三つの影が花の上に乗り話している。


「相変わらず仲がいいな」

「「は?」」


 わちゃわちゃとした言い合いが終わりマハが尋ねる。


「で、どうすんだ、ビビー」


 ビビーは緑の草原の先を見つめながらニヤリと笑う。


「決まってるだろ。オレたちは」

 マハの方に向き直し、次の言葉を発しようとした時

「でもいいのかなあ? 森から勝手に抜け出してこんなところまで来ちゃったけど、みんな心配してないかなあ?」

「ハーラ。今いいところなんだけど」

「ごめん、ビビー。でもそろそろ戻らないとみんなが心配するよ?」


「はっ。だからお前は来なくていいって言ったんだ。そんなに森の奴らのことが気になるならついてこなけりゃよかっただろ」

「でも……」


「うん。わかったよ、ハーラ。マハ、そろそろ戻ろうか」

「はぁ。仕方ねえなあ」


 三つの影は白い花から降りると森に向けて歩き始める。


「でもさ、ニル爺の言ってたことってホントなのかな?」

「けっ。あんなの嘘に決まってるじゃねえか」

「ビビーはどう思う?」

「ん? 何の話だ?」

「もう! 覚えてないの? ニル爺が言ってたでしょ!? 森の外は危ないって。見たこともない怪獣が私達を連れて行っちゃうって! ニル爺の子どもも連れ去られて行方がわからないって」


「ふーん」

「ふーん、ってビビー! ちゃんと聞いてるの!? ねえビビー!」


「うるせえなあ、そんなのニル爺がオレたちを森から出さないために言ってるだけだろ、ハーラは気にし過ぎなんだよ」

「そんなこと言って、じゃあマハは本当に怪獣がでてきたらどうするのよ」

「ふん、怪獣なんてオレがやっつけてやるさ」

「そんなこと言ってもマハは一番に逃げると思う」

「なんだとっ!」


 そんないつもと変わらない、いやいつもより少しだけ冒険をした気持ちの三つの影はふわふわとした光になって森の中に消えていった。


 三つの影が帰った先には無惨な村の姿が……

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危機一髪 UD @UdAsato

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