ファイト! 危機一髪!
押見五六三
とある山での出来事……
あの日、私は一人で朝から登山を楽しんでいました。
大して険しい山でもないので、装備もそこそこで山歩きを楽しんでいたんです。
それは、ちょうど山腹に差し掛かった時の事でした。
私は木々の間から見える山裾の景色を楽しんでいたのですが、調子に乗って登山道を少し外れて撮影を行ったんです。
もっと良い写真を撮ろうと一歩前に踏み出したその時、足場の岩が崩れ、私は滑るように数メートル下に転げ落ちました。
慌てて左手で近くの木の根を持ち、何とか持ち堪えましたが、木の根は今にも抜けそうで、とてもじゃないけど大人一人の体重を何分も支えられる状態では有りませんでした。
下を見ると谷底です。
落ちたら一巻の終わりでしょう。
私は登山道に戻る為、残った右手で何かを掴もうとしましたが、掴める物が有りません。
とりあえず右手を上にあげ、山肌を掴んででも登ろうとしたんです。
足元が再び滑り、落下しそうに成るのを堪えながら、私は自分を奮い立たせる為に大声を上げました。
「ファイトー!」
その時、誰かが私の右手を掴んだのです。
そして掴まれた右手は上へと引っ張り上げられました。
近くに人が居たんだ。助かったと思いました。
そして私は命からがら、登山道までもどれました。
私はお礼を言おうと右手を掴んでいる相手の方を見たのですが……。
「あれ?」
辺りを見回しましたが、誰も居ませんでした。
私が掴んでいたものは、人の手ではなく、二十センチほどの枯れ枝でした。
私は枯れ枝に引っ張り上げられた?
そんな馬鹿な……。
私は狐につままれた感覚で、そのままその日は山を下りました。
後で話を聞くと、その山で同じような経験をした人が何人も居るそうです。
私は山の主に感謝しながらも、どうしても解せない点が一つ有ります。
それは、私があの日、登山前に飲んだドリンクが、リポ●●ンDでは無くオロ●●ンCだった事です……。
〈おしまい〉
ファイト! 危機一髪! 押見五六三 @563
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