みにくいカエルのNTR

珠邑ミト

みにくいカエルのNTR



 そう、第一印象は、「ああ、なんてキレイな子なんだ」だったんですよ。


 プラチナブロンドの巻き毛に、同じ色の睫毛まつげが、まるで、けぶるように、バサバサとしていて、エメラルド色の瞳に、影をさしていたんです。まっ白な肌は、皮をむいたばかりのライチのように、ぷりぷりと瑞々みずみずしかった。哀愁ただよう風情ふぜい、とでも、いうのでしょうか? ラッキーだと思いましたよ。こんなキレイな子なら、もう絶対にボクのお嫁さんの一人にしなきゃって。


 そう、彼女はね、異世界から召喚された、聖女様だったんです。


 申しおくれました。ボクは、この国の王子で、ケグリンといいます。

 こういってはなんですが、ボク、なかなか人気があるんですよ。お妃もたくさんいるし、愛妾になりたいって女の子も、いろんな国から、ひっきりなしにやってきます。なぜなら、ボクの国には、伝説のゴールデンボールがありますからね。ゴールデンボールの魅力は、やっぱりなかなかのものなんですよ。


 でもね、使いすぎると、ゴールデンボールも減るんです。

 ええ、減るんです。


 だから、ゴールデンボールの補充のために、聖女様を召喚しないといけないんですね。

 それで、彼女にきてもらった。

 ――だというのに!

 あの、下男のヘビ! たしか名前はペンと言ったかな。あいつが聖女ちゃんを、さらって行ったのです。なんてこと、なんて罪人、身のほど知らずの、許すまじき愚か者!

 というわけで、ボク、勇ましくも、ひとりで、聖女ちゃんを助けに行ったのです。ええ、ヤツの巣穴まで。


 松の枝で作った険を片手に、そろりそろりと、ペンの巣穴にもぐりこみました。あいつ、絶対に、聖女ちゃんを丸のみにして、さらったに違いないのです。早くたすけてあげなくては、あのすべすべぷりぷりと気持ちよさそうなお肌が、とろとろに溶けてしまわないともかぎりません。ボクのかわいがってあげるべきお肌が、台無しになったら、たいへんです。急がなきゃ。でもなるべく静かに――。


 そうして、どれくらい、奥深くまでもぐったでしょうか。

 目のまえに、ほんのりとあかりが見えました。

 ちらりと物陰から、その先の様子を、うかがいました。

 暗いくらい、土のなかの、巣穴のなか。

 ちょうどその時、ぺぺっ、と、ペンのやつの口から、聖女ちゃんが吐きだされたのです!

 一寸ほどの体格の、ちいさな聖女ちゃんは、ぐったりとしつつも、そのキレイでかわいらしい顔をあげました。疲れてみえましたが、無事です。プラチナブロンドの髪も、まつげも、むきたてのライチのような、ぷりぷりのお肌も無事。


「ヤッホー! きれいなままのボクの聖女ちゃん! 危機一髪、無事だった!」


 思わず、大声でそう叫んでしまったのです。


 ぐるうりと鎌首を持ち上げたペンの目が、ギラリと光りました。


「たいへんだ、聖女様。エロガエル王子が追ってきてしまいました! でもだいじょうぶ! わたし、学はないけど、オオグライなので!」


 ――オオグライ?


 その言葉の意味を、かんがえているうちに、ボクの周りは、真っ暗になりました。




                             (了)







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