逃げる事は悪ではない

白亜タタラ

第1話行き着く先

 ボクは雲。

 空を揺蕩う不定形の雲。


 ボクは星。

 夜闇を照らす一番星。


 ボクは鳥。

 自らの翼でどこまでも飛んで行ける鳥。


 ボクはボクはボクは・・・。



 この目に映るものに憧れて、数多の一生想像を経験した。


 満足に動き、好奇心をくすぐられ、自由を謳歌する。


 それだけでなんと世界に彩が溢れることだろう。


 塵溜めに産まれて塵溜めから出る事のなかったボクではあるけれど、夢想した世界一生はとても暖かかった。



 でも、新たな世界をもう想い描く事は出来ない。


 伽藍堂になってしまったボク。


 彩も匂いも暖かささえ感じられなくなってしまったボク。


 自分の鼓動の音だけがはっきりと聞こえた。


 いや、微かにだけど誰かの足音が聞こえた様な気がした。


 気にはなる。

 しかし、時間切れタイムリミットの様だ。



 ーー後日、とある国のスラムにて、一人の少年の死体が発見された。


 骨と皮ばかりで痩せ細った身体に白く濁りきった目が特徴的だった少年。



 そして、その首には隷属の首輪が嵌められていたという。

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