誰かにとっては ここまで
水のような、風のような、何か波のようなものが肌を撫でる。
「ああ、今度はしっかり見えるよ」
ずっと光だけがあった。それが何かを確認することも考えなかった。
「君だったんだね、続きを見てくれたのは」
本当の僕の人生は、最初に君の姿を見た時に終わっていた。
「最初に、誰かが居たのは分かった。良く見えなかったんだけど、動けない僕の代わりに『次』を選んでくれた」
でも、次のエピソードを望んでくれたからここまでこれた。
「僕は最初から勇者だったのかな。それとも、ただのつまらない人間だったのかな」
たぶん、それはもう分からない。
だけど、やるべきことは分かっている。
「行ってきます」
次こそは世界を救えるのか。
救った先で、死んだあとどうなるのか――
「わからない、わからない」
だけど、一つだけ決めたことはある。
それを、聞き届けて欲しい。
「もし仮に、次の人生で彼女と出会うことがったのなら――恥ずかしくない生き方をしたい」
光の中に消えていく。
大丈夫、もう君が次を押さなくても、僕は歩いて行けるから。
「ありがとう」
始点n 狼二世 @ookaminisei
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