スタートとビギンについて

TiLA

スタートとビギンについて

 始まるという意味の英単語には「start」と「begin」がある。


 「start」の語源は「sterten(急に飛び出す)」からきている。

 ゆえにstartという言葉には止まっていたものが急に動き出すイメージが含まれる。


 だから100m走で走り始める時、あるいはテストを開始する時、


「よーい、スタート!」


 とはいうが、


「よーい、ビギン!」


 とは言わない。


 「begin」の語源はゲルマン語族の言語に由来すると言われている。

 その言語では「be-」が「周囲」、「gin-」が「開く」という意味を持っており、これらが組み合わさって「begin」が「始める」という意味を持つようになった。


 このbeginであるが、連続するものや継続するものの始点的なイメージが含まれる。

 beginの対義語は「end(終わる)」であり、静から動のイメージのstartの対義語が「stop(止まる)」であることからもそのニュアンスは察しられよう。


 したがって初心者のことはビギナーというが、スターターとはいわない。

 その初心者はまだそれを継続しているからこその初心者であるからである。


 しかしながら、ここで一つの疑問が生じる。

 であれば、なぜ我々は


「新しい恋がスタートした」


 とはいうが、


「新しい恋がビギンした」


 とはいわないのだろうか?

 恋は終わるもので、止まるものではないと思うのであるが……いやしかし、昔「恋を止めないで」という歌が流行ったこともあったので、そう言えなくもないか?


 雨が降り始めたときはstartもbeginも用いられるがstartの場合は突然降り出した雨のイメージとなる。やはり「ラブストーリーは突然に」と、いうことだろうか?


 恋愛初心者は恋のビギナーであり、その方がビギナーズラックといった縁起の良い言葉などもあったりして良いのではないかと思ったりもしたのだが。


 しかし、ここで新たな知見を加えてさらに考察してみよう。

 実はstartという言葉には、「出発する」という意味も含まれている。

 その場合のstartの対義語は「goal(ゴール)」となるのだ!


 そう、つまりスタートした恋はストップすることではなくゴールすることを目指して始まっていたのだ!


 よって逆説的に言えば、もしあなたの恋が悲しいバッドエンドを迎えたとしたのならば、そもそもその恋はスタートしていなかったといえる。そして「恋がビギンした」ともいわないのであれば、そもそも始まってもいなかった。だから終わってしまったと思っているのも勝手な思い込み、誤解なのである。


 さぁ、今度こそ新しい恋をスタートしよう。

 あなたが自らブレーキを踏んで止めない限り、その恋にはゴールしかないのだから。

 

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