始まりの日
水城みつは
迷宮発生
「石の天井……、あっ、
それは、突然だった。
穏やかな行楽日和の秋休み、僕たち家族と幼馴染の彩花は出来たばかりのドリームツリーの展望台へと遊びに来ていた。
――
この世界において予測できない災害の一つである。
当初、迷宮発生による周辺地域の崩壊や迷宮氾濫による周辺被害によって人類の生存圏が大きく脅かされると考えられていたが、まるでゲームのようなステータスにスキル、
◆ ◇ ◆
「
微かな声と共に腕に抱え込んだ彩花が身じろいだ。 黒く艷やかな髪も今は埃と血に塗れている。
「彩花! 良かった。痛いところとかはないかい?」
意識を失っていた彩花が目を覚ましたことにまずは安堵した。
「うん、私は大丈夫って、白くん血だらけじゃない!」
「あぁ、もう治ってるから大丈夫」
服はボロボロになっているが胸の大きな傷は既に塞がっている。
「ところで白くん、何が起きたの? それに、おじさんとおばさんは?」
「……
静かに首を振った。迷宮発生における生還率は1%を切ると言われている。
そして、このダンジョンに生存者は他にいないのが分かった。分かってしまった。
生存率が限りなく低い迷宮発生だが、生還した人には共通点があった。
その全ての人の共通点、それは
「ところで彩花、
「ん……、ステータス」
虚空を見つめた彩花の目が見開かれる。
ただし、そのステータスは本人のみ確認でき、決して他の人が知ることはできない。
「……
「そっか……、まずはこのダンジョンから帰還しないとな。僕の方はまだ役に立てそうがない役職なんで地上までは任せるけど良い?」
モンスターの少ない道を案内することはできそうだが、まだ戦闘面が心もとない。
「大丈夫、白くんは私が守るよ! そのための役職だからね」
◆ ◇ ◆
――
現代における災厄。
1.
2.
3.
これが
だが、【
◆ ◇ ◆
「――このように
「はい、
迷宮発生から帰還した俺達は役職が発現したこともあり、探索者になるための講習を特例的に受けていた。
「その通りよ。よく勉強してますね。講習の方はこれで終わりだから、後は
「そもそも
この世界、ネット小説等でよくあるような『鑑定』スキルは発見されていないし、便利なステータスカードのようなものもない。ただ自分のステータスが分かるだけだ。
「あー、それね。けど
ギルドの方も個人情報にあたるため、それほど厳密な申告は求めていないらしい。クエスト斡旋時に参考にする程度だそうだ。
「だけど、【勇者】とか【賢者】とか背伸びした申請はやめときなさい。黒歴史として延々とからかわれるわよ」
「えー、白くんかっこいい役職で登録してもよいんだよ?」
「いや、しないから。それに〚
「じゃあ、『白の狩人』とかは? 髪の色に合わせた名前で良くない?」
◆ ◇ ◆
「経緯を思うとおめでとうというべきか悩むところだが、ようこそ
およそ公務員とは思えない、ごつい風貌のギルドマスターから
通称、
「ありがとうございます。これでダンジョンに潜れるんですね」
ライセンスカードを握る手に力が入る。
「うむ。やはりダンジョンに潜るんだな……。ただし、君たちのライセンスはまだ制限付きだ。入れるダンジョンと階層の制約がある。それに、当分の間はギルドから保護者というか指導役が付いてないとダンジョンへの入場は禁止だ」
「うっす」
「はい、わかりました。って白くん、ふてくされない」
「ところで、何故そこまでしてダンジョンに潜りたいんだ? 言っちゃ悪いがダンジョンに対して良い思いは持ってないだろう?」
ギルドマスターが少し眉根を寄せてじっとこっちを見つめている。
「俺はダンジョンを、俺から家族を奪ったダンジョンを潰します。ダンジョンの元である
「私は白くんを守る〚
その日、最年少
始まりの日 水城みつは @mituha
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