第3話 義妹と脳内選択肢

「ふ、ふーん……。 とりあえずアンタのおかしな言動の意味が分かって良かったわ 」

「ああ、納得して貰えたなら良かった。 ちなみに瑠奈、お前にはどんな選択肢が見えてんだ? 」

「え、あたし? えっとね…… 」


 どうやらこいつが見えていた選択肢は俺に関するものばかりで、なんというかそこまでならいいのだが、「義兄を転ばせる 」「義兄に打撃を加える 」「義兄が話しかけてきたら無視する」などと虐めきったものとなっているようだ。


「どおぉりで家でよく転げるわけだァァッ! 」

「まぁ……つまりそういうことだから 」

「ってこたぁ瑠奈は俺のこと嫌ってるわけじゃないってことなのか? 」

「うん、まぁ嫌い……ではないかな 」

「んだよぉ、俺てっきり嫌われてんのかと思ってたぜ 」

「……だからって好きではないんだから調子乗らないで! 」

 義兄相手に頬を赤らめながら、いつも通り強気な姿勢を見せてくるが、嫌われていないと分かった途端可愛く思えてくるもんだな。


「この際、乗りかかった舟だから言うけど、あたし達協力し合わない? 」

 協力? それは願ってもない話だ。

 このまま黙って選択肢をクリアするのは、今日思ったが困難を極めている。

 お互いがお互いに関する選択肢なのであれば、それを共有してタスクをこなして行けば解決というものだ。


 そう俺が考えていると瑠奈はさらに付け加えるように、

「あ、あたしの選択肢もね、そろそろ黙ってこなすには無理があるものも多くなってきたってゆーか、アンタに説明なく嫌がらせするのも疲れてきたってゆーか…… 」

 提案そのものに自信がないのか、声がどんどん小さくなっていく。


「よし、分かった! 俺も困っていたところだ! ここは同盟を結ぼう! 」

 瑠奈はそう聞くと、パッと笑顔になり、

「うん!!」

 力強くそう答えたのだった。


 同盟を結ぶことにおいて、いくつか決め事を行った。


 1. 選択肢が現れたら、各自メッセージを送り合う

 2. お互い用事があれど可能な限り選択肢を優先する

 3. 選択肢については2人で解決する

 4. この事は2人だけの秘密にする


 こんなところか。

 他にあれば随時追加していくことにしよう。


「決めたはいいけど、アンタ寧々ちゃんにも黙ってていいの? 」

「え、そりゃこんなこと言ってもなぁ…… 」

「でも寧々ちゃんのこと好きなんじゃないの? 」

「ええっ!! なんで……そのことを……あの、えと 」

 完全に図星すぎて、舌が回らない。

 さすがおれの義妹、鋭すぎる。


「言わないなら言わないでいいけどさ。 あ、そうだ! 寧々ちゃんとの恋協力してあげよっか? 」

「ええっ!? 急になんだよ、怖ぇなぁ……。 望みはなんだ? 」

「望みなんてないわよ!! いつまで経ってもくっつかないから腹立ってるだけ! それに……今まで散々蹴ったり、転ばせたり迷惑かけたんだし、これくらい…… 」


 なるほど。

 申し訳ない気持ちがあった訳か。

 そりゃ女の気持ちを知るには女が1番だし、瑠奈が協力してくれるなら最高の助っ人だ。

 それにこの数年無駄に拡がってしまった兄弟の溝が埋まるかもしれない。


「分かった。 頼むよ 」

「うん!!任せて!! 」

 そんなやる気に満ちた笑顔を向けている瑠奈に対して、

「お前も、その好きな男がいたら……言えよ? 協力すっから 」

「は……?」

「痛ってぇ! お前の蹴り強いんだから手加減しろよ……ってもしかして今のも選択肢か!? 」

「いや、長年のくせというか…… これはどうも抜けないわ 」

「いやいや、勘弁してくれよ…… 」


 何はともあれ、選択肢でも恋愛でも強い味方を得たってわけだ。



 ◇



「颯ちゃん、起きてぇ! 朝だよっ! 」

「……んぁ? ……寧々か。 もう少し寝かせろ 」

「これで寝たらもう遅刻確定だよっ! 」


 これは俺が当たり前だと思っていたいつもの風景だ。

 昨日1日なかっただけでこの大切さを知ることになるなんて。


 だがいつも通りであっていつも通りではない。

 そこに義妹がいるからだ。

「ちょっと颯真! 寧々ちゃん困ってんだから起きなよ 」

 俺は目が覚めるなり義妹を見る。

 あれ、俺の部屋に義妹がいる。

 目を擦れど擦れど彼女は消えたりなどしなかった。

「な、なによ? 」

 少し恥ずかしそうに、そして思春期がきた若者のように照れが混じった、そんな言い方だった。

 そこで初めて俺は昨日の出来事が夢ではなかったと悟った。


 そうだ、俺たちは昨日同盟を結んだ。

 そして謎の選択肢へと立ち向かっていくのだ。


「家を出たはいいけど、これ間に合うのか!? 」

「颯ちゃん! 私起こしたよ!?」

「ったくなんであたしまで走らなきゃいけないのよっ! 」

「それはお前が勝手についてきたからだろ! 」


 俺たちは学校へやや小走りで向かっている。

 どうやら俺が起きるのが遅かったらしい。


 すると寧々が俺に小声で耳打ちしてきた。

「……瑠奈ちゃんと上手くいってるじゃん! 」

 寧々は嬉しそうに肘で小突いてくる。

「だからなぁ、お前そういうのじゃないって何回言えば……」

「照れなくていいって! 私に任せてよ! 」

「だからぁ……」

 説明するのも疲れてくるな。


 さらに反対からも同様に、

「寧々ちゃんといい感じなわけ? 」

「お前聞こえてた!? 話被っちゃってんだわ 」

「……は? 何がよ! 」

 この義妹はいつもキレ気味である。


「あ、ちょっと待て!! 視界が…… 」


 1. 義妹をおんぶして登校する

 2. 生徒指導の石松先生に校門で唾をかける


 こんな馬鹿な選択肢あってたまるかよっ!


「……どうしたの、颯ちゃん? 」

「まさか、颯真…… 」

「ああ、そのまさかだ! 瑠奈! 乗れィ! 」

 おれはおんぶをする体勢に入った。

 瑠奈はそれを見て、すぐ悟ったようで、

「もぉ!! どうにでもなれぇぇ! 」

 背中に義妹の熱が伝わってくる。

「ええっ…… ちょっと2人ともこんなとこで何を…… 」

「寧々、気にするな、走るぞ! 」


 俺たちは今日からこうやって選択肢と立ち向かっていくのだろう。

 きっと終わりがあると信じて。


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完結までご愛読ありがとうございます🥺

今回、初めてラブコメを執筆してみました!


ぜひ面白いな、これからも頑張ってくれ期待してるぞと思って下さったらページ下部の『☆で称える』の+ボタンを押して、評価を入れていただけると嬉しいです。

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今回は短編として執筆してみましたが、長編の『無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からきた俺は神より魔力が多いらしい~』もぜひご覧ください!

 

そしてこれからも作品を完結させていくつもりですので、ぜひ作者フォローもよろしくお願いします🙏

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俺の脳内選択肢がヒロインだったはずの幼馴染ではなく、義妹ばかり優先するんだが 甲賀流 @kouga0208

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