第5話「ネコ神さま、もう少しだけ……」

 ここは、懐かしい空くんのお部屋。猫目石家の二階の西側の空くんのお部屋の窓には、橙色の秋の夕暮れが映し出されていた。


 ミケランは、特等席だった空くんのお膝の上で、うとうとと寝息をたてて眠っていた。猫目石家の新しい家族となったチビちゃんも、ミルクをたっぷり飲んでお腹いっぱいになったのか、あたたかい毛布にくるまれて幸せそうに眠っていた。


(ああ……この幸せな時間がもっと続けばいいのににゃあ……むにゃむにゃ)


―― こら、こら、ミケランよ。名残惜しい気持ちはようわかるが、そろそろ、猫天原に戻る時間じゃよ。


 ネコ神さまの声が、ミケランの耳に届いた。


「ネコ神さま……お願いです……あと、もう少しだけ……」


 ミケランの幸せそうな寝顔を見て、ネコ神さまは、


「しょうがない子じゃのう……もう少しだけじゃぞ」

 と言って、にっこりと微笑んだ。


                                    了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミケランの心のこり 喜島 塔 @sadaharu1031

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ