第7話
襲われていた船の船長たちがこちら側の船にやってきていた。
船に壊れている箇所があったため、こちらの船員たちと協力して船の修理を行なっていた。その間修理する船にいては修理の邪魔になる。
「いや〜助かりました」
襲われていた船の船長たちがこちら側の船にやってきて、感謝の意を述べた。
「いえいえ。間に合ってよかったですよ」
「ここ最近クラーケンの数が増えていまして。襲われることもあります」
「あたしからすれば食べられる数が増えて万々歳よ」
「それなら是非食べ尽くしてくれていることをお願いします」
「アンちゃん。悪いな」
「なあに。この海はあたしのものな訳だし、悪さするやつはあたしが許さないし」
「頼りになるわ」
「交易するなら言ってくれたら、護衛ぐらいするのに」
「前回してもらったからな。毎回毎回してもらうのも申し訳ないわ」
「そんなことないって」
「なあ、リーファさん」
「何ですか?」
「あの人らとあいつは知り合いなのか?」
「あたしたちに依頼をしてくれている商会さんだよ」
商会さん。と言うことは、商人のたちってことか。道理で船員の中でいい身なりをしている人がいるなと思ったらそう言うことだったのか。
「あの商会が今回私たちに依頼をしてきたんだよ」
「依頼人の船だったのか。間に合ってよかったな」
「本当にそうだよ。討伐できても、その船が襲われた後だったら報酬もらえないことになるかもだよ」
ただ討伐をすると言うことだけじゃあダメだってことか。
「商会の人とあれだけ仲良くするものなんだな」
アンは商人たちとかなり楽しそうに会話をしていた。
「仕事は信頼がないともらえないからね。あたしたちは冒険者みたいにギルドが仕事の依頼を張り出して、したい仕事を選択するようなことはできないから」
「それにしたってだろ」
依頼人でお得意さんだとしても、それ以上の仲のように見える。
「仕事仲間といえ、何度も飲んでいる人たちだからね。仲がいいのは当然だよ」
「仕事仲間なのか」
「海で仕事をする人は少ないの。冒険者みたいにバカみたいにいるわけじゃない。だから世間は狭い。だから仕事の依頼をもらうためにあ〜言う風に仲良くいることは大切なんだよ」
貴族は互いに腹の探り合いだけど。彼らにはそれは見られない。
本当に仲がいいんだろう。
商人たちの船の修理、上の人間たちの外交と並行して海面ではクラーケンの解体が行われていた。
倒したクラーケンは海の上に浮かんでいる。船員たちは小舟に乗って海に浮かぶクラーケンを解体していた。胴体と足を切り離すのは魔法を使い、そこから細かく解体していくのは人の手による解体していっている。
「足も必要なのか?」
普通のイカとかの場合、足はあまり食べられないはずだ。
「私たちは食べないけど、アンちゃんが干物にして食べるからね」
「ゲソだぞ」
「珍味でいいんだって」
「変わってんな」
珍味だからか。
解体は続く。
巨体なため細かくしないと船に乗せられないらしい。
内臓のほとんどは海へと捨て、墨はある程度採取して、残りは同様に海に捨てる。
海に捨てれば、他の生物の餌になるからだとか。
あと、内臓は食べられないし、持っていても腐らせるだけになるのが実際の理由だそうだ。
「あれだけ大きいと、調理は大変じゃないのか?」
船の中の調理場はかなり狭い。
「全部は調理しないよ。というか船の上では食べないし」
「そうなのか?」
「どこかの島に上陸できたらそこで調理することはあるけど、それでもほんの少ししかできないよ」
「へえ〜」
「それにしてもあ〜いった外交はメアリーさんがすると思ってたんだけど」
「メアリーさんにやらせたら大変なことになるよ」
「そんなに外交下手なのか」
「下手じゃないよ。むしろ上手」
「だったらなんでだ?」
「他の理由があるんだ」
「ふ〜ん。そういえばずっとあの人の姿を見ないな」
「船でメアリーさんの姿はほとんど見られないと思ったほうがいいよ。あの時はかなりレアなケースだよ」
メアリーさんは船の中で一体何をしてるんだ?
「メアリーさんの仕事は陸でがメインになるから」
事務処理の方が専門なのかな。
それっぽいな。メガネかけていたから、事務処理能力に長けていそうだ。
そんな話をしていると、彼女が俺たちの方にやってきた。
「終わったのか」
「まあね」
「お疲れ様」
「リーファー〜まだ食べられないの?」
「まだ解体中だよ」
「そうだぞ。あんなデカいものをどうやって食ってんだ?」
「炙れば食べられる」
「あんなデカいのを、船の上で炙るつもりか」
「それ以外にどうやって食べるのよ」
そんなことしたら船燃えるだろ。
「解体が済むまでは待っててね」
「え〜…………まあ、仕方ないか」
納得はしていないようだ。
そんなに食べたいのかよ。
「解体は今日中に終わるかもしれないが、船の修理は今日中に終わるのか?」
船のダメージぐらいは決して小さくはない。今日中に修理が完了して船を動かせるとは思えない。
「海の上だから全部は修理できない。航海ができるぐらいにまで修理をすればいいの。こっちの物資も下手に減らしたくはないし」
「だから今日中に終わるわけか」
「今日中に終わったら、向こうの船員たちと酒盛りするから」
「それも外交か」
「仲良くしておくことに越したことはない。何より私がクラーケンをつまみにして飲みたいの」
「欲望しか言ってないな」
「飲みたくはないの?」
「そりゃあ飲みたいさ」
「でしょ。リーファ。解体が終わり次第調理よろしく。船に積む分は後まわしでいいから」
「アイアイサー。美味しいもの作るね」
その後、解体が終わった後、商人も含めて酒盛りが行われた。
騎士をクビになった俺は憧れていた冒険者になろうと思ったが、冒険者にもなれなかったので俺が海賊になって海で暴れ回ることにした。 珈琲カップ @kakipi1835
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