海賊に捕らわれ、奴隷として売り飛ばされた娼館で男娼をさせられていた王太子は、ついに己が力で自由を勝ち取った。そしてアレックスの名を得て私掠船と娼館を切り盛りするようになった彼だが、ある日海岸に行き倒れが流れ着いたとの報告を受ける。ひとりは若い訳あり風の男ランス。そしてもうひとりは、死んだはずの娘と酷似した少女レジーナ。海賊に襲われたという彼らの話を発端に、アレックスは大渦へ引きずり込まれていく。
構成がすばらしいですねぇ。主人公のアレックスさんも貴種流離を演じている身の上なのですが、レジーナさんという貴種流離の渦に翻弄される姫君が登場、彼の物語へ絡みついて。しかも超訳ありなランスさんが加わることで、国家間の問題まで織り込まれる。侵略戦争というわかりやすい舞台装置を用いることなく、キャラクターを窮地へ追い込んでいく設定とドラマの押し引きの妙、実にすばらしい!
政治と思惑と心情が縒り合わされた、一筋縄ではいかない大ロマンです!
(「これぞ王道! 貴種流離譚!」4選/文=高橋 剛)