ライバルなんて言わせない

Asahi-Yuhi

最高な親友

──骨折です。


 俺の診断結果。


 もう無理だろう。


 陸上選手になるのは。


 現実を突きつけられていた。


 でも、お前がいるから、もう一回。


 お前と、最悪のスタートを切りたい。


ーー


 俺らは、高校の陸上の全国大会で出会った。


 たった二人の高校一年生の陸上選手。


 期待が大きかった。


 だから、俺は全力を出し切った。


 結果は十位。


 あいつより上。


 あいつは十二位。


 かなりの僅差だった。


 出場者もめっちゃいるから、全体で五十人とか。


 全国から来ているとはいえ、みんな速かった。


 俺は来年こそはトップ五入りしたいと思っていた。


 あいつも走ることが好きで、めっちゃ気があった。


 だから、あいつとはめっちゃ仲良くなった。


ーー


 でも、壊れちゃった。


──骨折。


 完治するまでには、一年。


 走れるようになるまでには、手術次第。


 失敗したら、一生走れない。


 骨折の原因は、俺。


 北海道旅行に行って、つい調子にのって、氷の上で走って、思いっきり足を打ち付けた。


 分かっていても痛いし、現実が怖い。


ーー


 あいつが高校一年生のみの陸上大会で優勝した。


 その報告で、俺のところに見舞いに来た。


「本当はお前が優勝するはずだったろ。俺はお前ともう一回、走りたい。お前とスタートを切りたい」


 あいつの言葉に俺はなにも言えなかった。


 手術をしたら、走れる。


 そんなこと、分かっていたけど。


 お前がそういうなら、手術を受けるよ。


 お前と競うために。


ーー


「手術を始めますスタート


 そんな医者の言葉が耳障りだった。


 お前とスタートするために。


 失敗しても、無理してでも、お前と走る。


 そんな自分勝手なままでいさせてくれ。


ーー


 一年後。


 俺のとなりにはお前がいる。


 笑いながら、お前に向かって一言発する。


「スタート、するぞ」


 その言葉にお前は、ニヤッと悪魔みたいな笑いをした。


 その十秒後。


 もしかしたら、一秒だったかもしれないし、一分経っていたかもしれない。


 でも、聞こえた。


「スタート」


 その声で、俺らは走り出した。


──最悪のスタートを最高の親友のお前と切るために__。

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