垂雪
深川夏眠
垂雪(しずりゆき)
クリスマスのプレゼント交換会でもらった真っ白い便箋に
血みたいな赤さのインクを詰めたペンで書く。
難しい漢字だってへっちゃらさ。
ここには辞書があるし、
いざというときのために隠しておいたヘッドランプをつけてるからね。
寒い。
停電になってからずいぶん経った気がする。
ココアを飲みたいけどムリだな。
ひねった足首がズキズキして熱を持っている。
いろんなものが崩れて倒れてきたんだけど、
ちょうど上手くバランスを取って支え合う格好になったので、
低い天井ができて、すごく狭い屋根裏部屋にいる気分。
ほこりがキラキラ舞い踊る。
時々ドサッと重い音がするのは、
園庭のケヤキの枝に積もった雪が落ちるせいだろう。
ぼくたち、新年早々ここを飛び出すはずだったのにね。
いざ決行って瞬間に、あんな衝撃波に襲われるなんて。
仕方ない、もう一度計画を練って最初からやりなおそうよ。
位置について用意ドンで再スタートさ。
脱走するんだ、二人三脚で。
本館の具合はどうですか。
きみは無事ですか。
【了】
*2024年1月書き下ろし。
**縦書き版はRomancer『掌編 -Short Short Stories-』にて
無料でお読みいただけます。
https://romancer.voyager.co.jp/?p=116877&post_type=rmcposts
***雰囲気画⇒https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/eXtpRfQP
垂雪 深川夏眠 @fukagawanatsumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます