スタート! ~あの時の気持ち~

マクスウェルの仔猫

第1話 スタート!


「ん? 何だろコレ……」


 2022年3月3日。

 お昼ご飯休憩の時の事でした。


 以前から気になっていたコミックの原作があると知り、読む為に「カクヨム」に訪れていた私は、サイト内で表示されているバナーを眺めたまま首をかしげていました。


「KAC2022……カクヨムのイベントかな? 2022ってわざわざ書いてあるって事は毎年行われてるっぽい。どれどれ……」


 バナーを触ってみる。


 そこでスマホの中に吸い込まれて異世界に転移したり、ゲームの中に取り込まれたり、『はずれ』の言葉が出てくるといった事はなく、無事に【KAC2022】の案内文にたどり着きました。 


 約半年後に自分のタイピング能力の無さを存分にさらけ出した作品を投稿してブラインドタッチの基礎を教えてくれたリア友にののしられ、サイコホラーのつもりで書いた作品でこれまたリア友に『心底気持ち悪い。もう読まない』と歯を食いしばられた、といった数々の暴走をする事を知る由もなかった私は、書かれている内容にじっくりと目を通していきました。


 ねえ、友よ。

 ちなうの。


 私でなくて、これはマ猫の仕業なの。←この一言で火に油を注いだ



 それはさておき。


『600~4000文字』『3月中に11のお題が出る』『お題公開~締め切りが2~3日』『一回目のお題は「二刀流」』『3月4日11:59が第一回目の締め切り』などのKACの説明を読んだ私は、書いてみたい! と思う反面、とある不安に駆られました。


『また、書けずに諦めてしまうのではないか』と。


 どうしてそう思ったのかというと、投稿しようとして書き始めたはいいものの、ストーリーを進める事ができずに何度も諦めた過去があったからでした。


 読み専として多くの作品に出会ってはワクワクし、べそを書き、続きが早く読みたい! と騒いだりしていた私。当然、『自分も書いてみたい!』と思うようになりました。


 そんなある日。


 追いかけていた物語に感動した私は『よーし、今日から私も書いてみよう!』と決心し、その無料投稿サイトで投稿するべく動きだしました。


 サイトで小説の書き方やコツを探し、世界観、キャラクターやストーリー作りなどを頭に入れつつ起承転結や序破急を意識して簡単なプロットを作成して、『いざ!』と気合十分に書き始めました。


 そして、目標を設定しました。まずは書けるだけ書き、ある程度物語が進んだらそこから連載として少しずつ投稿する。


 自分の書いた物語が、誰かの目に留まって。そして読んでもらえたならどんなに嬉しいだろう。そう思うだけで、ドキドキのワクワクでした。


 実はこれが、カクヨムでは書き上げて公開する事ができた「Star gazer」という話の原型で、望まぬ終わりを迎えようとする星の叫びに導かれ、星を救い続けた少年が役目を終えた後の物語を書くつもりでいました。ジャンルで言うと異世界ファンタジーでした。


 で、結果から言うと。


 ほとんど、と言っていい程に書き進める事ができませんでした。


 書き始めたはいいものの、何行か進むと『この文章はおかしいんじゃないか』と悩んで戻って書き直す、という事を繰り返し、『このエピソードは必要?』と書いては消し、『このキャラとこのキャラ、区別がつかなくない?』と、とあるキャラのシーンを削っては新たなキャラを出し、納得がいかずにまた消したり。


 そのくせ、『使う魔法はかっこいい名前にしたい』とか『恋愛要素を入れたい』とか変に気合いを入れては書いて戻って書き直し、を繰り返す。書き直したと思ったらまた不安要素を見つけて手が止まり、長考が始まる。


 私、本当に何をやっていたんだか。こんな事をしていたらいつまで経っても話が進んでいくはずがない。でもその時はそうやって頑張って書いていけば書き上げられると思っていたんですね。


 で、考えているうちに当然その日の限界がやってきます。やらなきゃいけない事、欠かせない事。ご飯やお風呂とか翌日の準備もろもろ、そして睡眠。


 で、そのどこかのタイミングで思う訳です。


『ここまで考えたから、明日はもっと書こう。書けるはず!』と。でも、結局はこれを毎日繰り返してただけでした。最終的に一月もすると『やっぱり物語を書くのって才能がないとダメなのかな。私じゃ無理なのかも』と諦めて。


 でもまたしばらく読み専に戻って物語を追ううちに書きたい!熱が再燃して同じような事を繰り返していたのです。



 そんな過去があり、それでもKACの要綱を見ながら、『書きたい』と『書けない』の間でうろうろとしていた私。


 と、その時。

 ふと、私の心の中にある考えが浮かびました。











” 貴方が落としたのは、この金の斧ですか? 

 それとも、この銀の斧ですか? ”





 





  

 金のエンゼルでお願いします。

 何でやねん。


 ではなく。


『悩んで、諦めて二回目以降にまた悩んで……になるくらいなら、最初からチャレンジしたい』

『ここで諦めたら、書きたいという気持ちを失ってしまうかもしれない』


 という事でした。


 後悔したくない。自分で考えた物語を書き上げる夢は捨てたくない。


 そこから、何度目になるかわからない作品作りのKACチャレンジを始めたのです。



 私にとって幸運だった事は、締め切りまで時間がなかった事です。


 他サイトで書けなかった物語を仕上げる事は、もともと長編の構想だったのと、あんなに時間をかけて書ききれなかったものが完成する訳がない、と割り切れました。


 じっくりと考えている暇もない。

 じゃあ、何を書くか。


 いっそ自分が書いてみたいシチュを集めてみて、考えすぎずに勢いで書いてみたらどうか。ちょうどその頃ハマっていたのが異世界ファンタジーで、主人公が圧倒的な力、魔法を駆使して異世界を救っていくという物語だったのでそこからヒントを得ました。


 二刀流……時代劇かファンタジー?

 ファンタジーなら異世界召喚。

 召喚された少年が滅びそうな世界を救う。

 召喚したのは女神様。

 もう後がない。

 今回の召喚が最後。

 女神様と少年が強大な敵に立ち向かう。

 ハッピーエンド。

 チョロイン(笑)


 そこまで考えてお昼ご飯の休憩が終了したので、それをベースに実際に描き始めたのは仕事が終わって、うちに戻ってからでした。


 過去の失敗と時間がない事から文章もキャラも起承転結も深く考えずに、決めたシチュにそってとにかく書いていきました。誤字や脱字は後でまとめて直す。長考はしない。締め切りは翌日の昼、これが書けなかったらKACは諦める。中途半端に参加する位なら皆勤賞か初回で諦める。そう、心に決めて。


 数時間後。


 夜が明ける頃に、私の初投稿作品「邪神と女神様と僕」が書き上がりました。そこから誤字脱字をチェックし、あらすじやタグを編集した後に改めて作者名を考え(読み専の時の名前を変えました)「マクスウェルの仔猫」にしました。何故この名前にしたのかは覚えていませんが、何かで『目を引く名前にした方がいい』と書いてあったので、何かで読んだ「マクスウェル方程式(の悪魔)」を仔猫に変え、少し長めにしてみました。


 全てを仕上げ、投稿をしたのが出勤一時間前の朝7時。そう、それが「マクスウェルの仔猫」の第一歩、スタートでした。あの時の達成感と書き上げた嬉しさは今でも忘れられません。


 そして。


 初めて作品を書き上げる事ができた喜びと、私の書いた物を読んでもらえた! 応援してもらえた! という感動を原動力に、皆勤賞を頂く事ができたのです。




 カクヨムで作品を投稿するようになって、たくさんの喜びや発見、出会いがありました。


 喜び。


 初めてPVがついた時(作品を読んでもらえた事が嬉しくて、その『1PV』の画面を何回も見に行っては、うふうふしてました)、初めての応援。初めてもらったコメントは温かくて嬉しくって。初めてのお星さまは、訳がわからずに喜んでました。


(※上記の何かが増えるたびに書いた作品を見に行っては『ちゃんと書けてた所もあったのかな! えへへ! えへへ!』と喜びを噛みしめに行って読み返し、誤字脱字を見つけては崩れ落ちたりしてました)


 私のばか。

 この癖は今でもかなり残っています。


 発見。


 書いているうちに、一番書きたい所を思い浮かべてから進めればもっと書きやすいのではないか、と素人考えで思いついたり(これが今でも私のメインの書き方となっています。素人って怖いですね……いや、怖いのは私?!)。


 自分の書きたい世界、テーマがどういうものなのかを、作品をいくつか書き始めてからわかったりもしました(私がよく書く事が『例え、死が想い合う人同士を分かつとしても、二度と逢えないなんてはずはない。またいつか巡り合う』。こんな事を思っているなんて書き始める迄全く知りませんでした)。


 出会い。


 同じ趣味、また職業としてカクヨムに訪れている皆様の温かさ、優しさ。私の作品よりも笑い、涙し、感動したコメントの数々、レビュー。


 私の作品を追いかけて下さるようになった皆様のへのありがたさ。

 涙が出ます(*´艸`*)


 いろいろと書けるようになった後、それでも迷い、心が折れそうになった時。皆様に何度助けられ、力を頂いたかわかりません。


 またそんな素晴らしい皆様と出逢う事ができ、作品に感化され、また勉強させていただく感謝、そして作品に対する感動ばかりです。


 なかなかご恩返しができずに本当にごめんなさい。本当に素晴らしい出会いばっかりでした。



 『マクスウェルの仔猫』はカクヨムで生まれました。


 私はカクヨムとカクヨムで出逢えた皆様と作品が大好きです。そんなカクヨムだからこそ……今ではいくつかのサイトでも活動していますが、作品を書く時はやっぱり一番気合いが入ります。めちゃめちゃ気合が入ります。いや落ち着けマ猫。


 そんなカクヨムとカクヨムで出逢えた皆様に感謝の気持ちが少しでも届けばいいな、とこのエッセイを書きました。またいつもの『マ猫のやらかした話』でもありますが(笑)。


 皆様に深く深く(ねっちょりと濃く(笑))、感謝の気持ちを込めて。


 カクヨム、そして皆様、大好きだぁ!(絶叫)


 ~終わり~


 

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