第3話
セージュとジュリーの間を隔てるのは、マホガニーの小ぶりなテーブルがたったひとつである。
音もなく客間へ入ってきたメイドが、二人分のティーカップに紅茶を注ぐ。
「フランス語で話せる子はいないの。あなたが女の子だったら侍女にもできたのに、少し残念ね」
カップを満たすと、すぐにメイドは下がっていった。女主人から指示されない限り、客が帰るまで無言を貫くルールらしい。セージュは彼女の洗練された動作を内心で讃えた。
「侍女が必要なのですか?」
ジュリーは気だるげに目を細める。セージュには、黒いまつ毛が酷く重たそうに見えた。
「そうでもないわね。お呼ばれなんてめったにないし、お買い物について来て欲しいくらいかしら」
「それなら僕のほうが適任です。メイドよりも多く荷物が持てますし、馬も得意ですから」
「
「明日からでもお役に立ちたいというのが本音です」
「いいわ。雇ってあげましょう」
ジュリーに即答され、口元に笑みを湛えたまま、セージュは軽く目をみはる。言ってはみたものの、まさか相手にしてもらえるとは思わなかった。
「あなたに聞かれて気付いたから。私、メイドよりも話し相手のほうがずっとずっと欲しいんだわ。よろしくね、セージュ」
ルヴナンと泡えかな奇談蒐集家 平蕾知初雪 @tsulalakilikili
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