第22話 終幕
半太郎達二人は、そのまま研究所を脱出していた。
クリスが言う。
「お前は、結局、友人達を守ることを選んだんだな」
「……あぁ」
帰路につく半太郎の手は真っ赤に染まっていて、血のにおいが鼻の奥にへばりついていた。
「だが、お前のおかげでワクチンも無事に取り出せて、隊員の元へ届けられそうなんだ。……よかったんじゃないか?」
ワクチンは文字通り、奥の部屋にいた人のお腹の中に収まっていた。
半太郎達はそれを一人一人捌いていったのだ。
「いいや。自分がしたいことのために、人を殺めたんだ。ボクはもう、最低の人殺し。奴らと同じだよ」
悲しげにいう半太郎の背中をクリスが叩く。
「同じじゃねぇよ」
「……え?」
「同じじゃない。世の中には、殺して正解だったなんて思ってる大馬鹿野郎も外道もいるんだ。迷ってるなら、そんなやつらと同じだなんて、言わねぇよ」
「でも……」
「それに、後悔してるなら、償えば良い。殺した分まで、誰かを助けろ。それがお前のすべきことだ」
償う。罪と向き合う。そんな慰めのようなことしか、クリスは言えなかった。
「……そうだね。そうするよ」
しかし、半太郎にはそれでよかった。
きっと明くる朝になれば、彼がやったことは多くの人の知るところになってしまうだろう。
罪は消えない。一生背負わなければならない。だが、それと向き合える強さを手にしたならば、きっとまた新しい世界が開けるはずだ。
半太郎はそういう気持ちで、夜の空を仰いだのだった。
【完】
気弱な殺人犯と強気な傭兵さん ラピ丸 @taitoruhoruda-
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