第21話 対決③

 半太郎達が進んだ先は、実験室だった。

 薄暗い実験室の中には、老人が一人立っている。


「おい、そこのお前! 何をしてる!」


 クリスが大きな声で呼びかけると、老人はよぼよぼな動作でなんとか後ろを振り返った。

 そこにいたのは、なんと、あろうことか、保安隊の隊長だったのである。


「隊長! どうしてここに?」


 半太郎は驚いて訊ねていた。

 隊長は耳が遠かったのですぐには聞き取れなかったが、やがてうわごとのように以下のことを繰り返しはじめた。


「私は、生き返らせたかったんだ……」

「生き返らせる?」


 クリスの頭の中に浮かんだのは、ゾンビになったこれまでの被害者。そして、ゾンビになるであろう保安隊の人達の姿である。


「何を生き返らせようとして、あんなウイルスを作ったんだ?」

「……恋人を。あの日、助けられなかった恋人を、生き返らせたかったんだ。おお、■■■■……。愛しの我が■■■■! お前さえいれば、何もいらないのに……」


 老人の痛々しい姿に、クリスは直視が出来なかった。


「自分のために、自分のためにこんな酷い薬を作ったのか? なら、どうして、隊員を実験台に使ったんだ? 隊員の多くが保菌者なのは、実験に使ったからだろ!?」


 叫んだ途端、銃声が鳴り響く。

 ゆっくりと倒れていくのは、ウイルスを作った老人だ。

 半太郎達の背後から、拳銃が撃たれたのだ。

 振り返ると、そこにあったのはコードリィの姿だった。

 驚いて言葉もない半太郎達にコードリィは告げる。


「このじじいは、関係ない。隊員を実験につかったのは私だよ」

「お前! どうして!」

「このじじいから余計なことが漏れる前に、口封じさ。ここの秘密がバレたんだ。この施設ももう終わりだろ」

「そんな……。まだなにも飲み込めてないのに」

「知るかよ。お前の都合なんて」


 コードリィは言いたいことだけ言うと、自分のこめかみに銃口を突きつけた。

 半太郎はそれを見て驚く。


「おい! 待て! 早まるな!」

「創里半太郎! お前に与えられた選択肢は二つだ。保菌者のワクチンは完成している。ただし、この更に奥にある実験室の中にいる培養体の中でだがな。そいつらを殺さなければ、お友達は助けられないぞ。ちなみにそいつらを閉じ込めておく部屋のロックは切ってある。もたもたしてたら逃げられるだろうな。お友達か、他人か。せいぜい悩めよ」


 まもなく二発目の銃声が鳴り響き、黒幕は地面へと倒れたのであった。

 しばらくして、奥にある扉が自動で動き出す。

 半太郎は困惑の中で、最後の部屋へ続く扉が開いていくのを見つめていた。

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