第7話 エピローグ

「う~ん、どないしよ・・・」

「お父さん、バイクの広告見て、何悩んでるの?」


「このホンダのバイク、初代のバイクは亡くなった親父が乗っててん。俺が幼稚園より前のころかなぁ、黄色と黒のカラーやったけど、その記憶があって、買おうかどうしようか悩んでてん」

「欲しかったら、買ったらええやん。でも、買ったとして、あんたいつ乗るの?仕事ばっかりで、乗る暇ないやん」


「そこやねんなぁ。バイクとか車って、どっかで『乗ってナンボ』やからなぁ。バイク、買ったはええけど、乗らんと放ったらかしになったら、バイクがかわいそうやしなぁ」

「『お父さんの思い出』として買うんやったら、それはそれで価値があると思うし、あんたのポリシー『乗ってナンボ』に反する、と思うんやったらやめたらいいんちゃう?あんたのお小遣いで買うんやから、私、何にも文句言わへんよ」


「ありがとう。う~ん、でも悩むなぁ~」


20歳の時に初めて感じた「風を切って走る歓び」、どこかでそれを求めて頭を悩ませている。そんな私は、今はやりの「中高年リターンライダー」予備軍である。あの頃の歓びを、どこかで求めながら、仕事漬けの日々を過ごしている。


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風を切って走る! 川線・山線 @Toh-yan

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