"Star"と

里予木一

"Star"と

 全ての始まりスタートは、数十億年前。それ以来、私はStarと共に生きてきた。


 遥か昔、世界に何もなかったころから。様々な生命の移り変わりを見守ってきた。


 様々な変化があった。水中が主だった生命いのちたちは、やがて地上へと進出した。莫大な数の生物がどんどん巨大化、多様化した時代ときもあった。


 巨大な星屑の落下により、環境が大きく変わったことも。


 そして、ここしばらくは、一つの種が大きく進歩を続けていた。


 とよく似たその生命たちは、少しずつ生き方を変え、様々な道具を使い、色々なものを生み出した。――そして、その中で、多くの争いもあった。


 他の生命を何度も滅ぼした。森や海や山を滅ぼした。――同種同士でさえ、殺し合った。


 様々な過程を経て、その生命はせかいを支配するまでになった。そして、地上のモノだけでは飽き足らず、星にまで危害を加えるようになった。


 穴を掘り、大気を汚し、星すら壊しかねない兵器を生み出した。


 事ここに至り、私は気付く。


『――あぁ、この生命は……星を滅ぼす害獣なのだ』


 私は何度も警告をした。稲妻を起こし、地を揺らし、波を起こし、気候を変えた。――まだ生命が未熟な頃は、それらにより自制を促すことができた。しかし今はもう、私の警告ことばは届かなくなっていた。


 そうして今――星を殺しかねない兵器を用いた、戦争ころしあいが行われようとしている。


 私は、一つの決断をした。


『一度、星を終わらせよう』


 遥か昔、他の星屑が落ちたときと同じように、滅びの一撃てんばつを地上に放つ。その余波は激しく――地上に在るモノを薙ぎ払った。気候は変動し、ほぼすべての生命は消え去った。


『あぁ……みんな、なくなっちゃった』


 自分がやったこととはいえ、私は悲しかった。この星を作ったときはこんなことになるなんて思いもしなかったのだ。


 だが、悲しんでばかりもいられない。この星はまだ死んでいない。これから、また育てていかなくては。


 ――幸い、一度育った星だから、生命のは多数存在する。


 それらを育てつつ、失敗の原因を考えた。


 あの種族と、それらが用いた科学技術が、星を滅ぼす危険となった。ならば。


『一つの種だけが地上を支配することがないよう、いくつもの知的生命体や多様な種族が育つようにしよう』


『科学技術とは違う、星を滅ぼすことのないを広めよう』


 あの種族が生み出した、様々な文化。一通り目を通しているが、その中に参考になりそうな文献があった。


 そこには『魔法』と呼ばれる力が存在し、多種多様な生物が、種族が、怪物が、それぞれ独自の進化を遂げて、地上を各々のやり方で支配していた。


『じゃあ、これを試してみよう』


 星に植え付けた種に細工を施す。


 これから、長い時をかけ、この星は大きく変わっていくだろう。


 今この時が、新たなスタートだ。


 ――願わくば、この次は、長くStarと共に在ることができますように。



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