第4話新しい人生のスタート

 僕は異世界人保護所に約二ヶ月滞在した。

 その間僕以外の異世界人は現れなかったため、ずっとテリィが僕の相手をしてくれていた。


 時々町へ出て、商店街や職人街などを見て歩いた。

 この世界でも庶民は向こうと同じように働いて、それぞれの家族と一緒に生活していた。


 幸せそうな家族を見ていると、もう会えなくなくなってしまった自分の親兄弟や友達のことを思い出して暗くなる。


 今の僕には、ここで何ができるのかまだわからない。これからどう生きて行けばいいのか迷っていた。


 見た目はまだ子どもの僕に、テリィは養子として引き取ってくれる夫婦を探すとも言ってくれた。だが、あまり気が進まなかった。


 ここでは十歳になると仕事をはじめるという。実質十六歳の僕だから、義親に世話されるよりは一人前に働きたいと思った。


 この世界には冒険者と言われる職業がある。これもラノベではお馴染みの職業だ。すべて自己責任の代わりに束縛されることなく自由に動けるという。


 幸いこの異世界人保護所は冒険者ギルドの一部だから、テリィ頼んで冒険者登録をしてもらった。


 散々に迷ったたあげく、僕は異世界人保護所を出て、独り立ちする決心をした。

 テリィは一年間はここにいられると言ってくれたが、生活に慣れるのは早い方が良い。


 せっかく見知らぬ世界へ来たのだから、この世界を見てまわりたい。

 冒険者として稼ぎながら、旅をしてみることにした。


 この先、僕が何になれるのかわからないが、旅をしながら色んな経験をして行こう。今はテリィしか知り合いはいないが、これから仲間や友人を増やして行こう。


人間だけだなく、妖精族や獣人族にも会ってみたい。それはファンタジー好きのロマンだぜ!!


 テリィからは、冒険者スターターセットというのを渡された。保護所を出る時に、決めた仕事に合わせて渡されるものらしい。


 ぶ厚いキャンバス地のリュックの中に、着替え三組と野営用コンロ、鉄のナイフが2本。それと当面の生活費が入った革袋が入っていた。


「もう行くのか?」


 テリィが心配そうに聞いてきた。

 僕がまだ、見た目子どもなのが気になっているようだった。


「はい。お世話になりました」


「そうか。気をつけてな。異世界人保護所は冒険者ギルドが置かれた町には併設されてるから、何かあったら身分証を見せて頼れよ。宿泊もできる。自販機飯もつくからな」


「はい、わかりました。向こうのご飯が食べたくなったら頼ります」

「おお、そうしろ」


 テリィは僕の頭を撫でて笑った。


「では、行って来ます。ありがとうございました」

 僕は感謝を込めて深く頭を下げた。


 こうして、僕の新しい旅がはじまった。

支配階級とやらの神族よ見ていろよ。僕は好きなように生きて行くんだ。


(終)


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最後までお読みいただきありがとうございました。

第2回めのお題で続編を書いています。

よろしかったら、こちらもどうぞ。


『アラタ危機一髪!』

https://kakuyomu.jp/works/16818023211766404901

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テンプレ・スタート 仲津麻子 @kukiha

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