第3話支配者の遊技場
「質問があればなんでも聞けよ」
そういってテリィは書類に目を落とした。
テーブルの上には、拳を振り回した方が似合うガチムチ筋肉男には不似合いな書類の山があった。
彼は一枚ずつ目を通して、何かブツブツつぶやきながらインクを吸わせた羽ペンでサインをしていた。
僕は渡された冊子に目を通してみた。
そこには割とラノベでの設定に近い世界観が書かれていた。
お約束の疑似西欧中世的なファンタジー世界。魔法があってモンスターがいて、妖精族、人間族、獣人族が住まう世界。
そして、それらの種族とは別に、世界の支配階級として神族と魔族がいた。
『このコメンス界は支配階級の箱庭である。彼らの意志によって創られ運営される遊技場である』
僕はこの一節を読んで固まった。
ここは支配階級の遊技場? まさか、遊びのために生かされているのがここの人たちってこと?
「あの、テリィさん」
僕は仕事に集中しているテリィに声をかけた。
「なんだ、アラタ」
「ここなのですが、支配階級の遊技場というところ」
「うん? ここがどうした」
「テリィさんが言っていた上って、この支配階級のことですか?」
「そうだ。このコメンスの世界は、神族が支配する世界だ」
「ここの世界の人たちって、支配階級の遊びのために生かされ
ているってあるんですが」
「ああ、常識だ。みんな知ってることさ」
「そんな。それって嫌じゃないんですか?」
「嫌だって感覚は無いな。生まれた時からここはそんな世界だからな」
「そうなんですね」
「そうだ、この前保護した異世界人が言ってたな。ここはRPGじゃなくて支配階級がストラテジーゲームをしてる世界だって」
「ストラテジーか」
「なんでも戦略ゲームとかいうらしいじゃないか」
「はい。向こうにはそういう遊びがありました」
「彼は支配階級が我々を動かして、動向を見ながら世界を発展させるって遊びをしているんじゃねえかって言ってたな」
「そんなことが?」
「まあ、我々下っ端には関係ねぇ話だ。普通に生きていられりゃいいことさ」
「はあ」
僕はなんだか脱力して、椅子の背もたれに寄りかかった。
なんだかもやもやして腑に落ちなかった。
ここの人達は、神族の駒であることをわかっていて生きているのだ。
それ以外生きようがないのは確かだが、自分の意志で生きているつもりが、実は誰かの意図によって動かされているなんて。
理不尽だ。
「アラタ、あんまり考えすぎねぇ方がいいぞ」
テリィは言い聞かせるように僕の頭を撫でた。
「もう前の世界には戻れねぇんだ。ここに馴れて生きて行くしかない」
「はい。そうですね」
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