秘密結社いじめX

真心 糸

ずっと見てる

「ねぇ〜、椎名〜、今日さぁ~掃除当番変わってくんなぁ~い?」


「え、、あの、、でも、わたし、、」


「でもぉ?

うちら友達っしょ?友達のお願い断るっての?」


「わ、わかった、、うん、、友達だもんね、、立花さん、、」


「ほんとぉー!ありあり!助かるわー!

じゃ!また明日!

おまたー!シナ子が代わってくれるって!

カラオケいこ!カラオケ!」


「うわw麗奈ひどぉwイジメじゃんw」


「ちがうしーwうちとシナ子は友達だから!

もういいからいこーよ!」


「ウケるw

麗奈のおごりっしょ?」


「なわけあるかーw

ばぁーかw」


バタバタバタ


立花さんを筆頭にギャルたちが騒がしく教室から出て行った


高校一年生の春

初めてのクラス

初対面のクラスメイトたち

1ヶ月も経たないうちに、僕のクラスではイジメが始まっていた


「、、、」


ガタ、ガタガタ


椎名さんが1人で机を動かし出す

掃除をするためだろう


椎名さんは、黒髪で目が隠れるほど前髪が長いメガネ女子だ


でも、僕は知っている


彼女は前髪を上げると美少女で、

毎日学校の花壇にお水をあげている心優しい少女だということを

イジメられていいような女の子じゃない


ガタ


でも、僕は彼女を助けることは出来ない

静かに席を立って

下駄箱に向かおうとした


「、、してやる、、ころ、、てやる、、」


教室から出るとき、不穏なセリフが背中の方から聞こえたが聞こえないふりをした


なんとか、なんとかしなくては

そうは思うが

なにをすればいいかは僕には分からない


♢♦♢


「おはよー!シナ子!あっ!椎名ね椎名!

昨日はあんがとー!」


バァーン!


「いたっ!」


立花さんが椎名さんの肩をおもいっきり叩いた

結構な音が鳴る

かわいそうに


立花さんはケラケラと笑いながら、自分の席に座り、取り巻きのバカ女たちと談笑を始めた


立花麗奈さん

金髪に染めた長髪が目立つヤンキー女だ

スカートはギリギリまで短くしてるし、ピアスもしてる

でも、学園長の娘とかで、教師も誰も文句を言わない


この学園のヒエラルキーの頂点に立つ女だった


「あーん?メガ男ー!なに見てんだぁ?」


立花さんに睨まれる


「いや、、べつに、、」


「んだよキメェなぁ、ハッキリしゃべれよぉ〜」


「あはは!麗奈こわすぎ!次のターゲットはメガネ君かなー!」


「だから!イジメなんてしてないし!

うちは友達とちょっとじゃれてるだけ!

、、ぷっ!あはは!」


「、、、」


この女、どうしてこんなに性格がひん曲がってしまったのだろう

もう取り返しがつかないのだろうか


いや、取り返し、つくのかな、気になるなぁ


僕は黙って机の表面を眺め続けた


♢♦♢


「ねぇ、、立花さん、、ちょっといいかな?」


椎名さんが、帰ろうとしていた立花さんに声をかける


自分からいくとは、すごい勇気だ

イジメっ子に対して、すごい


がんばれ


時刻は夕方


もう空はすっかり赤くなっていた

教室には数人しか残っていない


赤い日差しに照らされながら、立花さんが椎名さんを睨みつけた


「あーん?シナ子ー?なんかようー?」


「ちょっと立花さんに、、相談があって、、

友達の!!立花さんに、、」


「は、はぁ?

うちに?なによ?」


鬼気迫る椎名さんに、立花さんが少し動揺する


「ちょっと、、屋上に、、いいかな?」


「えー?どうすっかなぁー?」


「友達なら!!少しくらい!!イイでしょ!!」


「、、べ、べつにいいけど

感謝してよね、うちが時間作るんだから」


「うん、、ありがと、、じゃあ屋上に、、」


そして、2人は屋上に消えていった


♢♦♢


「で、なによ?相談って?」


うちは学校の屋上で、夕焼けの中、地味なクラスメイトと話し合っていた


自分がイジメている女だ


そいつは前髪で顔を隠しておどおどしてる

気持ち悪い、さっさと用を済ませて帰りたい


うちは屋上の柵にもたれかかって、地味子の話を聞くふりをしていた


「あのね、、立花さんはさ、、私のお友達なんだよね?」


「あー?そうそう、そうだよー」


なわけねーだろ、きもっ


「じゃあさ、、掃除とか、、色々、、一方的に頼むの、、やめてくれないかな?

あと、シナ子って呼ぶのも、、

傷つくよ、、」


「あー、、ごめんごめん、やめるやめる」


なんだよ今更、めんどいなー

ま、テキトーにあしらえばいっか


「ホントに!?うれしい、、な、、

じゃあさ、、今までのこと、、謝ってくれない?」


「は?謝る?なんでうちがあんたに?」


「え?だって、、悪いことしてた自覚、あるんだよね?」


「はぁー?もう、めんどいなぁ

おまえはぐちゃぐちゃ言ってないで、うちの言うことだけ聞いておけよー」


「え?

どういうこと?立花さん?私たち友達だよね?」


シナ子が近づいてきて、うちの肩を揺すりながらそんなことを言ってくる


「ちょ!触んなよ!キモいな!」


うちは咄嗟にシナ子を突き飛ばす


「キモい?

、、キモいってなんだ!!

おま!おまえの方がキモいんだよ!!」


シナ子が目の色を変えて飛び掛かってきた


「なっ!?やめろ!!この!地味子が!」


「バカにするな!私がおまえになにをした!

この!クソ女が!」


ドン!!


「は?」


うちは思いっきりシナ子に押されて、そのまま倒れていく

うしろはフェンスで

ここは屋上で


「そのまま死ねー!!」


シナ子のそんな声が、空の方から、屋上から?聞こえてきた


し、死ぬ


死にたくない


「い!いやぁー!!!」


バシッ!!


うちが目を瞑ると、うちの右手が誰かに掴まれて、身体が壁に叩きつけられた


「いたっ!なに!?」


うち落ちてたんじゃ


「はぁ、、立花さん、暴れないでよ」


「、、メガ男?」


「あのさ、僕の名前、追崎なんだけど?

いい加減覚えてくんない?バカなの?」


うすら笑いを浮かべたメガ男が、

屋上の一つ下の階から身体を出して、うちの右手を掴んでいた


は?こいつが助けてくれた?


「あ、、ありが、、」


「ところでさ、立花さんって彼氏いるの?」


「は?」


こんな状況で、わけのわからないことを聞くメガ男


「いや、実は僕、立花さんのこと好きなんだよね

だから付き合ってよ」


「は?」


「僕は立花さんみたいに自分が1番だって勘違いしてる女を屈服させるのが大好きなんだぁ

だから、ずっとキミのことを見てた

あの地味女、いじめるの楽しいよね?

楽しそうにしてるキミが好きなんだー」


ニヤニヤとしながら、ペラペラと訳のわからないことをしゃべる男がいた

なんなんだこいつは?

こわい


怖くなって、こいつから逃げたくて

下を見る

うちは宙吊りだ


死にたくない


必死になって左手を伸ばし、メガ男の腕にしがみつく


「いいから!助けて!」


「僕と付き合ってくれるかい?」


ニンマリと笑ってくる男、こわい


「い、、」


「い?」


「いや、、」


「じゃあ死ね」


メガ男がうちの手を振り解こうとする


「や!やめて!やめてよ!ふざけないで!」


「ふざけてんのはおまえだよ?

死ぬか僕と付き合うか、今すぐ選べ」


「わ、わかった!付き合う!付き合うから!」


「ふーん?そっか、命がかかったらすぐ股を開くのか

興醒めだな

もういいや、死ねよ」


また腕を揺らし出すメガ男


「なんで!なんでよ!付き合うって言ったじゃん!」


うちは怖くって、さっきからボロボロと涙が止まらなかった


「お、その顔いいね

いじめられる側の気分、分かったかな?

分かっちゃった、かな?

かなぁ?」


ニンマリと笑いかけてくる

こわい


「わ、わかった、わかりました、、

お、追崎くんとお付き合い、します

だから、、助けてください、、」


「おぉ、やればできるじゃん

いい子だね、麗奈」


そうして、ゆっくりと、うちは3階の窓から室内に引きずり込まれた


「はぁ、はぁ、はぁ、、うう、、」


「怖かったね、よしよし」


メガ男のやつがうちのことを気安く撫でてくる

キモい、ぶっ飛ばしたい、でも、怖くて立つことすら出来なかった


「じゃ、明日からよろしくなぁ?

麗奈」


ガラガラ


うちの長い1日は終わった


♢♦♢


翌日


「あー、追崎だが、急なことでみんなも驚くと思うが、引っ越すことになった」


は?メガ男が?


教室は少しだけザワザワする


てか、椎名のやつ、来てねーじゃん

あいつ、ぶっ殺してやろうと思ったのに


うちはイライラしながら、机に手を突っ込む

教科書を取り出そうとしたら、そこに見慣れない紙切れが入っていた


「なんだこれ?」


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麗奈へ

 椎名さんは僕が代わりにお仕置きしておいてあげたよ

 感謝してね

 でもさ、他人を虐げて喜んでる麗奈って、ホントくずだよね

 あのさ、またあんなことしたら、ホントに殺されちゃうかもしれないよ?

 てか、僕が殺してあげるね

 ずっと見てるぞ

 おまえの行動

 おまえの言動

 これからは少しはマシな人間になれ

 これは最終警告だ

 ココからがおまえの人生の【再スタート】だ

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「な、なんだよこれ、、」


うちはたぶん真っ青になってただろう


追崎だよな?これ

あいつの顔を思い出そうとする

でも、思い出せない

どんな顔だったろう


あいつに言われたこと

あいつに刻み込まれた恐怖だけが記憶に残っている


手紙をもう一度見る


震えが、震えが止まらなくなった


変わろう

変わらないとダメだ


うちは強く、そう決心した

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秘密結社いじめX 真心 糸 @magocoro_ito

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