スタートできない男の1週間

Haika(ハイカ)

スタートできない男の1週間

~月曜日~


 一日のスタートに朝のカフェオレを飲もうとしたら、シンクに零してしまった。

 もう一度朝のスタートを迎えるべく、気を取り直して再びカフェオレを入れ、リビングへ持っていったら、今度はテーブルの上のタブレットに零してしまった。

 防水だから良かったものの、拭いてもなおミルク臭い。僕は深いため息をついた。




~火曜日~


 朝、寒かったのでエアコンの電源を入れたら、中から埃がちょろちょろ出てきた。

 エアコンつけて温むどころじゃなかった。気持ちよい朝を迎えられる状態ではないくらい、フィルターから悪臭がしてきたので、急いで電源をOFFにした。

 帰ったら掃除しろ。じぶん。




~水曜日~


 朝、起きたら上司から業務連絡のメールがきていたので挨拶をしようとしたら、

 間違って予測変換で「およせいやコラ!」と打ったまま送信してしまった。

 急いで送信取り消しをし、改めて挨拶をした。既読はついていなかったので、上司は恐らく気づいていないと思われるが、悪い意味で目が覚めてしまった。

 今日一日、職場では終始、生きた心地がしなかった。




~木曜日~


 仕事の前にゴミを捨てに行ったら、ゴミ収集所がカラスに食い荒らされていた。

 早く捨てたいので、そのままゴミ袋を置いたら、カラス2羽に襲われた。

 すぐに追い払い、逃げたのでケガはなかったものの、スーツのお尻の部分に鳥の糞がついていたことに気づかず出社後、同僚に指摘されて発覚した。




~金曜日~


 夜は数人でカラオケにいった。自分の番が回ってきた歌のスタート時、開口一番にマイクに向かって盛大なクシャミをかました。

 その場にいた全員がビックリし、すぐに大爆笑の渦に包まれた。

 その時に連れの1人が、驚いた弾みで誤ってデンモクのスタートボタンをタッチしてしまい、採点モードが始まっていた。僕はなぜか90点の大台を叩きだした。




~土曜日~


 お風呂タイム。見たら浴槽からお湯がびしゃびしゃに溢れていた。

 昨夜の残り湯を追い炊きしたつもりが、間違って自動給湯のスタートボタンを押してしまっていたのだ。

 光熱費が勿体ないので、ぬるいを通り越して少し冷たい湯船に、頑張って浸かった。バカは風邪を引かないのだ。




~日曜日~


 前から観たかった映画が地上波で初放送されるというので、リビングにお菓子やドリンクもろもろを準備しておいた。

 が、放送前に腹部から嫌な“波”が襲い掛かってきた。僕は急いでトイレへと駆けこんだ。

 トイレから出た頃には、放送スタートから既に3分程が経過していた。仕方ないので、見れなかった部分はSNSで検索し、情報収集を急いだ。


 意図しない結末のネタバレまで食らってしまった。でも、観ていて面白かった。




 こんな感じで、1週間はロクなスタートを切れなかったと思う。

 ときに人間、一度は調子が狂うと、とことんツイていない事ばかり起こってしまう。それでも、時間はみな平等に過ぎ去っていく。

 だから、僕はこれからも「今」を生きていく。たとえ、どんなに地味で面白くないスタートであっても、いつかゴールに辿り着くと信じて。


 今日は、どんなスタートが待ち構えているのだろう?

 次こそ、いいスタートを迎えられるといいな。

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