スカートがめくれ上がってた時の考察

めで汰

めくれ上がったスカートの中身を見るのは、自己防衛のため

 スカートがめくれ上がった。


 と、なると当然それをる──いや、見るわけで。

 それは別にボクが男だからってわけではなく、きっと誰でも見るだろうと思う。


 想像してみてほしい。

 例えば電車の中でサラリーマンのズボンがずり下がったら。


 当然見る。


 そこにいやらしい気持ちなどみじんもない。

 ただ、異変が起きたから見てる。

 それだけだ。


 だってだぜ?

 このジョーカー時代。

 ずり落ちたスボンの中からババーンと凶器(変な意味ではない)が出てきてジョーカーする──いわゆるジョーカるかもしれないわけじゃないか。

 となると見ざるを得ない。

 そう、自己防衛のために。

 生き残るために。

 この世知辛い令和の時代を生き抜くために。


 そういうピリリとした気持ちをもってボクはめくれ上がったスカートの中を視て──いや、見ているのだ。


 そこにいやらしい気持ちなど、みじんたりともない。

 ボクはボク自身がイキ残る──いや、生き残るためにスカートの中身を凝視してるにすぎなのだ。

 そう、いわばこれはまさにサバイバルと言ってもいいであろう。


 そもそも考えてみてほしい。

 この黒パン、見せパン全盛期の時代にスカートがめくれたからなんだと。

 スカートがめくれて中のものが見えたからなんだというのだ。

 黒パン、見せパンなら見られたとしても、ほぼダメージは0に近いに違いない。

 仮に普通の下着を履いていたとしても──。


「逆になんで普通の下着を履いてるの?」


 そうとすら思えてしまう気がする。

 引く。

 逆に引くかも。

 あえて黒バンを履かずに普通の下着を履いてるというそのズラシっぷりに。


「怖いんだけど」


 そうとすら思えてしまうかもしれない。

 その恐怖に立ち向かう心を奮い立たせるべく、ボクらは視る──いや、見るのだ。


 そもそも。



『スカートがめくれ上がる』



 という現象が発生するにいたるには、多大な因果関係が関わってくることとなる。


 まず考えられるのは、風。


 風と言っても一言で言い表すのは難しい。


 そよ風。

 つむじ風。

 すきま風。


 これ以外にも。


 天狗風てんぐかぜ

 油風あぶらかぜ

 オロマップ。


 なんて一風いっぷう変わったものから。


 八重やえ潮風しほかぜ

 ほし入東風いりこち

 春疾風はるはやて


 なんていうカッコのいいものや。


 まじ。

 まとも。

 みなみ。

 にし。


 なんていうやる気のなさそうな名前のものまで、色々あるわけで。


 その中でも、スカートをめくりあげることの出来る風といえば、当然強風であろう。

 しかも、下から上に吹き上げるタイプの。


 そもそもスカートはめくれることが目的として作られてはいない。

 そのスカート──いや、スカートさんをめくり上がらせるってんだ。

 きっと、その風は風の中でも相当に気合の入った風に違いない。

 敬意を込めて風さん、と呼んだほうがいいかもしれない。



 しかし残念ながら、このスカートさんがめくれている原因は風さんによるものではない。


 このスカートめくれの怪異──そうだな、もはや怪異とでも呼ぶべきこの現象を引き起こしている、その原因は。



 きつねさん。



 によるものだからだ。


 狐さん。

 コンコン。

「コンコン、こんばんわっ!」と言って女性にがっついている男性の揶揄やゆではない。


 親指。

 中指。

 薬指。


 その三本の指の指先を合わせると、ほら出来た。

 狐さん。


 で、その指で作った狐さんが両脇からスカートさんをちょこんとつまんでめくりあげているわけなのである。



 しかも。



 ボクの目の前で。



 ひらりひらり。



 そんな擬音すら漂ってるように感じる。


 まぁ、そんなことされたら、そりゃあ──見るわけで。

 さらに、それはボクの目の前で行われているわけだから、目をそむけててもどうしても目に入ってきちゃうわけで。

 いわゆる不可抗力ふかこうりょくってやつなわけで。


 おまけに。

 目の前の彼女は最高の美少女。

 しかも黒髪のJK。

 なぜJKとわかるかと言うと制服を着てるからだ。

 こんなクソ寒い日に制服を着て生足丸出しで電車に乗っているのはJKしかいない。

 いい年して似非えせJKもどきの格好をしてるような甘ったれた奴に、こんな気合と根性は備わっていない(確信)。


 その絶世の美少女はニヤリと淫靡いんびな笑みを浮かべると、ボクの頭にふわぁさとスカートを被せた。



 闇。



 なにも見えない。



 黒パンどころか黒闇くろやみである。



 ふんわりとしたいい匂いだけが、ボクの鼻孔びこうを刺激する。



 あぁ、ここが、天国なのかな。



 意識が遠のいていく。



 そんなボクの耳に、電車のアナウンスが微かに聞こえてきた。



『この霊車れいしゃはぁ~、死ならば急行ぉ~、えっち煩悩ぼんのう経由ぅ~、輪廻転生りんねてんせい行きぃ~、次の駅はぁ~、現代ラブコメぇ~、現代ラブコメぇ~、ちょっとえっちなJKに一方的に迫られるぅ~、現代ラブコメ設定の主人公でぇ~、ございまぁ~す』



 ああ、思い出した……。



 ボク、主人公だった……。



 でも、全然読まれなくて、打ち切りになって……。



 次は、また設定を変えて使い回されるんだ、ボク……。



 でも、まぁ……。



 こういうご褒美な短編が間に挟まれるんだったら、それはそれで悪くない、かな……。



 スウぅ~!



 次なる長編のスタートに向け、ボクは胸いっぱいにJKのご褒美スカートさんの匂いを吸い込む。



 次の長編でこそ、人気者になるために。



────────────



 【あとがき】


「カクヨム短編賞創作フェス」

 その最初のお題が「スタート」ということで書き下ろしてみました。


 主人公って毎回似たような感じになりがちなので、次の長編を書くまでの間、せめてむくわれてほしいなという気持ちです。


 ほんとに今回初めて参加したカクコンではPV0の日々が続く絶望の毎日だったので、これを読んで興味を持っていただけた方はぜひ『作者フォロー』をよろしくお願いします!

 ついでに「☆☆☆」や「ハート」ももらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!

 短編お題、残りの2つも参加したいなと思ってますので、ぜひぜひよろしくお願いします。

 特に! 『作者フォロー』を! お願いします(切実土下座)!



 2つ目のお題「危機一髪」で書き下ろしたこちらも、ぜひご覧になってください!


『スキル「アイテムボックス」持ちの男の最後を看取った死刑囚マルコ・アッヘンダーの話』

https://kakuyomu.jp/works/16818023211758711824



 そして最後、3つ目のテーマ「秘密」で書いた作品がこちらになります。


『盲目女性の家に忍び込んだ冬ごもり前の熊の話』

https://kakuyomu.jp/works/16818023211920693712/episodes/16818023211921515278



 最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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