銀玉道のはじまり

ムタムッタ

本当にハマるのはいつから……?



「パチンコぉ?」

「そう、夢のある遊びです」


 パチンコに脳を焼かれたという女友達の白銀しろがねシルバ(日本生まれ日本育ちの外国人らしい)が、今日の目的地を楽しげに告げる。いや、もう店内なんだけどね。


 ゲーセンには何度も行ったことあるけど、ここはそれ以上にやかましい。ひとつの通路に並ぶパチンコ台からはそれぞれ違った効果音がでけぇ音で響く。


「これ、このアニメ好きでしたよね?」


 シルバの指差した先、何年も前のアニメがパチンコとなって目の前に鎮座していた。


「アニメは別として……パチンコってほとんど負けるんだろ? 金ドブに捨てるのが楽しいのかよ」

「おや、これは心外。お金をもらえる楽しい遊びなんですよ?」


 違うと思う。

 と言いつつシルバが財布から一万円札を2枚取り出すと、俺と自分のパチンコ台左上にある金を入れるトコに突っ込んだ。


「おま、一万て……」

「おごりです」


 これを奢りというのだろうか……?

 言われるがまま玉を出し、台右下のハンドル的なものを捻ると台の中で銀玉が舞う。


 わけがわからんうちに画面には金色の文字がデカデカと現れ、派手な戦いが始まる。キラッキラの液晶がまぶしくて目を細めていると、画面中央に「777」と数字が並ぶ。


「え? ん? 当たっ、た?」

「おぉ〜運がいいですね」


 「右打ち」と言われ、ハンドル的なものをグッとさらに捻る。


 あれよあれよという間に、俺の足元には銀玉の詰まった赤い箱が何箱も積み重なる。


「こ、これ……全部金になるんだよな?」

「楽しい遊びでしょう?」


 妖しく笑う女友達。

 自分が当たってないのに、嬉しそうに目を細めた。


 その後、銀玉を集計してもらい謎の景品に交換。『偶然パチンコ店の隣にある』建物に買い取ってもらうと、窓口のカルトンの上には5人の諭吉……


「ま、マジで金が増えた……」

「ね?」


 その「ね?」が何を意味するのか、俺にはまだわからなかった……


 それからシルバとはよくパチンコへ一緒に行くことが増えたのだが……


「はぁっ⁈ いまのが外れるのかよー!」


 自費で2万入れ、ことごとく激熱リーチが外れる。タイトルとテロップの金色文字も、台のバイブもなーんの意味もなく、「343」と不揃いの数字が嘲笑う。


 信頼度90%超えの演出すら簡単に外れる状況に、思わず叫びたくなる。


「どう考えても今の当たるやつだろ〜」

「もう今日は撤退しては? この前からもう3連敗ですよ?」

「いーや、もう2万入れたんだ。あと1万入れたら多分当たる!」


 根拠はない、けれど自信はある。

 だって俺は、初めてのパチンコで勝ったんだから。


「……ここまで見事にハマるとは」

「なんか言ったか?」


 まずは今日の負け分を捲る!

 俺の戦いはこれからだ!!

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