第5話 クラス対抗魔法技術トーナメントの開催
入学してから1日目の授業が終わり、ホームルームを行う為、クラス全員疲れ切った表情で教室に戻り席に座った。
教師が笑顔で教壇に立ち、帰りのホームルームを行う。
「みんな!1日目お疲れ様!ルピナスの授業はどうだったかしら?」
教師が生徒にそう問いかけるが、みんな疲れ切っており、各々「きつかったー」「レベルが高い…」と口走っていた。あやめに関しては魔力制御もままならなず、全力を出し切った影響か、目が虚ろになりボーッとしていて、言葉も発せない状況だった。
クラスの状況を見た教師は、少し笑みを浮かべると、黒板に魔法でデカデカと文字を書いた。
そこには、クラス対抗魔法技術トーナメントと書かれていた。教師は黒板に文字を書き終えると、真剣な表情で生徒達の方を振り向いた。
「今から3週間後にクラス対抗魔法技術トーナメントという行事を行います。これはクラスから1人代表を決め、6クラスの代表同士で戦ってもらいます。これはクラスの強さを決める重要な行事です。このトーナメントに負けてどうこうなる事はありませんが、他のクラスや他の学年から弱いクラスとして見られてしまいます。」
それを聞いた生徒達は少し嫌そうな表情をしており、それを見た教師は教卓を両手でバンッと叩き、生徒を見渡す。
「このトーナメントに出たい人は居る?推薦でも構いません。」
それを聞いた生徒達はザワザワと周りを見渡し始めた。このトーナメントに出るのが怖いのだ。このトーナメントで負ければクラスに最弱のレッテルを貼られ、周りから白い目で見られる、その上プレッシャーも掛かる為、皆嫌がっていた。そこで1人の生徒が静かに手を上げた。その少女は、髪の色は水色で、少しウェーブが掛かっており、肩まで伸びている髪に、凛と輝くピンク色の瞳、表情はムスッとしており、プライドが高そうな女の子だった。
あやめはその女の子をボーッと眺めていると、その少女に睨み付けられた為、慌てて目線を逸らした。
「私が出る。あなた達みたいなヘタレに任せておけない…それに私あなた達より強いから。それに…そこの金髪の娘。」
少女はそう言うと、ゆっくりと人差し指をセナに向けた。
指を指されたセナは、凄い目つきで睨まれた為、かなり怯えており、それを見たあやめは、心配そうにセナを見つめた。
「あんた…ルピナスに来てたのね?出来損ないのお嬢様?まぁ…中学の時同様に、あなたは永遠に私の下よ?せいぜい這いつくばりながら頑張るのね?」
そう言われたセナは、悔しそうにギュッと両拳を握り、密かに涙を流した。そのセナの状態を見たあやめは、堪忍袋の尾が切れた。過去に2人の間に何があったかは知らない…知らないけれど、友達を馬鹿にされ、怒らない奴が何処にいるだろうか。
あやめは目を瞑ると、机に力の限り拳を振り下ろした。ドンッ!という音がクラスに響き、周りは静まり返る。
そして、あやめは勢い良く席を立つと、水色の髪をした少女を思いっ切り睨みつけた。
「いい加減にしてくださいっ!あなたになんの権利があってセナに不愉快な事を言う必要があるのですかっ!!」
普段のほほーんとしていて、何を考えているかわからない、優しいあやめが、まるで人が変わったように声を荒げた。
水色の髪をした少女はあやめの迫力に少し驚いて、後ろにたじろいたが、直ぐに表情を元に戻した。
「何よ?アンタ見ない顔ね…?あぁ!!その出来損ないの友達!?アンタ友達なんて居たのね!!傑作だわ〜」
少女はゲラゲラと笑っており、それを聞いたあやめは、怒りのリミッターが外れ、我を失った。
あやめの蒼い眼が勢い良く輝くと、魔法が暴走し始め、周りのプリントや物が教室を飛び交い、あやめと水色の髪をした少女と教師を除いて、みんな床へ姿勢を低くした。
あやめの暴走を見た教師は驚いていた。それはそうだろう…授業では失敗ばかりしていた生徒が、かなりの魔力を秘めていたのだから、それにあやめの魔力は他の生徒とは少し違うものだった。
あやめは、怒りを表した表情で静かに少女を見た。
「あなた…出来損ない出来損ないって…セナに劣等感を覚えてるんでしょう?嫉妬してるんでしょう?そうですよね?だって本当にセナを下に見ているんだったら、セナを変に意識しないですよね…?」
少女は、身体を震わせながらも、あやめに対抗しようと、魔力を溜める。
あやめがゆっくり少女に近付こうとした時、騒ぎを聞きつけた学院長が、勢いよく扉を開け教室に入ってきた。学院長の表情は少し焦っており、一目散にあやめの元へと駆け寄った。学院長はあやめの前へ立つと、あやめの胸辺りに手を当て、静かに呪文を唱えた。すると、あやめの暴走が止まり、あやめは学院長にもたれかかるように意識を失った。
学院長は教師と生徒達を見ると、全員の安否を確認する。全員の安否を確認した学院長は安堵すると、少女に対して、無礼な発言は慎むようにと、注意をした。そして、学院長はあやめと少女の試合を組む事にする。このままでは決着が付かず、またあやめの魔力が暴走する可能性があるからだ。学院長は少女と教師に了承を得ると、優しい笑みを浮かべながら自分にもたれ掛かっているあやめを見た。自分が知っているあやめは、臆病で恥ずかしがり屋で、ドジっ子でいつも母親の後ろに隠れていた。そんな子が悲しむ友達の為に勇気を振り絞り、自分より格上であろう相手に立ち向かって見せた。学院長はあやめの成長を喜ぶと共に、しっかり魔法の制御を学ばせようと決心をした。
一方セナは、あやめの暴走に少し怯えはしたが、あやめが自分を庇ってくれた後ろ姿を見て、その英雄のような立ち振舞いに少し惚れてしまっていた。過去、自分の事を身を挺してまで立ち向かってくれた人は居なかったからだ。
こうして、あやめと少女の試合が決まり、あやめの波乱の学生生活が幕を上げようとしていた。
男の娘が創る魔法伝説 二木ラウダ @Kanae0401
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