第4話 実技授業

お昼休みが終わると、次は実技の授業なのでみんな教科書を持ち校内にある実践場へと移動する。移動中、セナとあやめは先程食堂で食べたランチについて楽しそうに話しながら歩いていた。しばらく廊下を歩くと、大きな2枚の扉が見えてくる。その扉を開けると、そこには円上に作られた野球場と同じくらい広いフィールドに、空が見える屋根開閉式のオープンな天井、地面には土が敷かれており、観客席まで設置されている広大な実習場だった。

クラスが集まったところで、教師が前に立ちクラス全員に聞こえるくらいの大きな声で、実習場について説明を行う。


「みんな!!ここが魔法の実技を行う練習場です!!ここでは実技の授業はもちろん!!クラス対抗試合や学年対抗試合など様々なイベントで使用されます!よく来る場所なのでしっかり場所を覚えておいてくださいね!!」


教師がそう説明すると、クラス全員が口を揃え、「はい!!」と返事をする。その次に教師は授業の説明を行う。2人一組になって、4種類の初期魔法を詠唱し、お互いの魔法を見せ合いながら悪い箇所を指摘し魔法を良くしましょうという内容だった。あやめは早くも壁にぶつかった。そう…この授業では、初期魔法を知っている前提でカリキュラムが組まれていた。しかし当の本人であるあやめはいつも通り、キョトンとした表情で少し首をかしげている。


「じゃあ!みんな!最初は基本中の基本である初級魔法を練習しましょう!2人一組になって下さい!」


クラスメイト達は、それぞれ仲良い人とペアを組んで行く。あやめも、のほほんとした笑顔で、周りをキョロキョロと見回しているセナの元へと向かった。


「セナちゃん〜一緒に組も〜?」


あやめが笑顔でそういうと、セナは嬉しそうな表情で「うん!」と首を縦に振った。

そして、あやめとセナは、実技の授業を始めた。あやめが魔法の基礎を知らない事を知っているセナは、まず自分が最初に魔法を詠唱し、あやめにお手本を見せることにした。セナが手を前にかざし、詠唱を始める。


「火のマナよ…」


セナが詠唱を始めると、セナの周りに赤い光が集まってきた。その光景を見たあやめは目を輝かせながらセナを見つめる。


「ファイヤーボール!」


セナが叫ぶとセナの手から火の玉が勢い良く飛び出してきた。その光景を見たあやめは少し驚いたような表情を見せる。セナが詠唱を終えると、あやめが笑顔でセナの顔に急接近した。


「綺麗な魔法だね〜!赤い光がセナちゃんに集まってたよ〜!」


あやめがそう言うと、セナは少し疑問を持った表情であやめを見た。


「あっ…赤い光…?」


セナがそういうと、あやめは満面の笑みで両手を大きく広げ、セナに説明をする。


「セナちゃんが詠唱したら!赤〜い光がセナちゃんに吸い込まれて行ったんだよ〜!」


セナは手を顎に当て、俯きながら、あやめが言った赤い光について、少し考えていた。それを横にあやめは詠唱を始めようとしたが、呪文を忘れてしまった。目をつむりながらしばらく考えた後、両手を前にかざした。


「火のマナよ〜」


あやめが詠唱を始めると、透き通った蒼い目が輝き始める。その光景を見たセナはその美しさに見惚れていた。そして、あやめは、うーん…と呪文を思い出しながら唱える。


「ファイヤ〜…ファイヤーなんとか〜」


セナが呪文を唱えた瞬間、手から火の玉が飛び出し、しばらく真っ直ぐ飛ぶと、急に方向転換し空へと消えてしまった。その光景をみたあやめはキョトンとした表情で自分の手のひらを見つめた。


「あれれ〜?」


その光景を観ていた教師が、少し笑みを浮かべながらゆっくりとあやめに近づいてきた。あやめは先生をジッと見つめた。グレーのスーツに、綺麗な茶色で真っ直ぐな髪、輝く茶色の瞳にスラッとしたモデルの様な身体で、整った顔付き、身長も170cmくらいとかなり高い。教師は笑顔であやめの頭をポンポンと叩いた。


「久しぶりに派手に魔法を失敗する生徒を見たわ」


教師は少し笑った後、真剣な顔付きになり話を続けた。


「魔法はね?イメージが大事なの。どんな魔法を出したいか、どのような威力にしたいのか全てはイメージで決まる。あなたがどんな風に成長するのか少し楽しみだわ」


先生はあやめに微笑むと、そのまま他の生徒の元へと行ってしまった。


あやめとセナは笑顔でお互いを見つめ合い、お互い魔法のレベルを上げることを誓った。







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