問い質してみた結果
「いったい、何が起こって居たのか。教えてはいただけませんの?」
説明、ねぇ……。
まあ、あれだ。俺には《前世の記憶》があったんだよ。
いや、自称女神サマが植え付けたヤツじゃなくて。
実際に、別の世界で生きていた記憶だ。
そっちの俺は、姉と妹がいる長男って立場だったんだが、上も下もそろって『乙女ゲーム』が好きでな……。
やれパズルゲームが解けない、だの、レベル上げが上手くいかない、だの、魔王が倒せない、だのと泣きついてきやがって。
恋愛パートには興味がなかったんでその辺はプレイしなかったんだが、手伝っている時に話を聞くこともあったからな。
それなりの数の作品のあらすじを聞かされたが、どの作品にも《悪役令嬢》なんて存在は出て来ねぇ。
ま、考えてみりゃ当然の話だ。
姉にしろ妹にしろ、『架空の話ならではの、ご都合主義ありきの恋愛』を楽しんでいたんだ。自分を投影している《ヒロイン》を「泥棒ネコ」と罵って嫌がらせの限りを尽くしてくるキャラクターなんて、居ても嫌なだけだろう。
しかも、実際に他人の契約に横やりを入れてんのは《ヒロイン》側だからな。
罵られても反論できない、浮気相手になりたいなんてヤツは少数派だろうし、ユーザーが嫌がる存在を、制作会社は生み出さない。
つまり、そういう記憶があったことで、自称女神サマが植え付けた《記憶》や《感情》が偽物だってことに確証が持てていたから、操られている前提で対策を立てられたってことだ。
ただ、人間に運命を強要できるような存在となると、神か、それに準ずる存在になるからな。そうなると、観測者が飽きるまで待つか、最悪、神殺しの魔術でも研究させようかと思っていたんだが。
信仰の厚いヤツほど、影響を受けていないって分かったからな。
相手が神罰を食らうような存在で助かったぜ。
「は? 冗談? そんなわけないだろう?
それでおまえが手に入るってんなら、神殺しくらい安いもんだ」
死後の世界で地獄に落とされることを怖がっていたら、強欲な人間様なんざ務まらねぇ。
そうは思わねぇか?
乙女ゲームで遊びたかった自称女神サマのお話 影夏 @eika-yaga
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