第13話 進捗
クロフトはフィーアに言われた通りに息で風を送るイメージをしてみた。いくらイメージしたって一向に膨らむ気配はなかった。
うーんとうなっているうちに、自分の口がいつの間にか突き出していた。それに合わせてふ~とそっと息も吐いてみた。息に煽られてゆらゆらと火が揺れる程度でとても膨らんだとは言い難い。その後も何回かやったがゆらゆらと揺れて数回後に大きい息を吐いた後にほんの少しだけ大きくなり今まで少し大きくするのにも苦戦していたのにちょっとだけコツをつかめたような気がして、その日の授業は終わった。
「んー……疲れたー。でも、今日はいい感じだったな。リードはどうだった?」
「いや、まったくだね。木が得意だから相性悪いのかもしれない」
「でも、火が燃やすときは木使うから相性は逆にいいじゃない?」
「あー……言われてみればそうか」
なんだか納得したようなリードは対象的にフィーアはなんだか落ち込んでいる様だった。第二課題が上手くいっていないからそれが原因だろうか。
自分は第一すら全然ダメなのに、そんなに落ち込まなくても。
なんだか次もあるよなんて言える雰囲気でもないし、かと言ってフィーアを励ましてあげられるような事も何もないし……。そう悩んでいるうちに寮に着いてしまう。
「じゃ、また明日……」とフィーアが元気のないままに挨拶する。
「うん。また」引き留める事も出来ず見送るだけだった。
リードと共に寮に戻る。
「フィー元気なかったね」
「うーんまぁ、そのうちいつも見たいにケロッと元気になってるよ。今は魔法が思ったようにいかないだけだから」
「それもそうか。フィーならすぐにコツ掴んで案外すぐに出来てるかもね」
そして、次の朝地獄の一般授業の次は水の魔法授業。三人ともに第一課題どまりに終わった。
さらに次の日、土の授業では意外にもクロフトが課題を進めれていた。
ただの土からブロックを作りだす。三人のうち最初にできたのがクロフトだった。
「できたっ!」
机の上に置かれた土ブロックを見て、喚起の声を上げる。
その声に教師が近づいてきて、「どれ」と言って土のブロックを手に取ろうとして、つかんだ時、指があたった部分から崩れる。
「ただ形を作れば成功ではありません。ちゃんとものを作らなければ意味がないのです。落としても割れない位頑丈ブロックにしてください」
せっかくできたのにまたやり直しになり、しゅんとなる。でもそう簡単に出来ないから
もう一回と心を決め、魔法を使う。
土を捏ね、固めていくイメージをする。昔にリード一緒に泥でいろいろ作った事を思いだす。あの時はただ水と土を混ぜてべちゃべちゃなものだったけど、それが乾いたら固い物になっていた。それを作るだけ。
目の前に置かれた土に手をかざして、魔法を使う。グニグニと土が動き捏ねられたようになる。
それをそのままブロックの形にする。今度は教師が来る前に自分でそっとブロックを掴んでみる。先ほどは触ったくらいで崩れる事は無くしっかりと持ち上げる事が出来た。そのまま落としてみる。ドンと重い音を立てて机の上に乗る。ひび割れた感じもないし、今度こそ成功だろう。
教師にも確認してもらい、土の第一課題を終了した。
ようやくクリアできた第一課題にクロフトは歓喜していた。
「ん~。やっとだ……。このまま全部の魔法も進めれば……」
「ちょっと、何あんただけいい気分になってるのよ!火の時にいろいろ教えてあげたんだから、私たちにも何か教えなさいよ!」
「そうだよ、自分だけ先に行こうなんて許さないよ」
二人に詰め寄られる。二人だって自分より先に進んでいる課題あるのに。フィーに関しては火と木が第二まで行ってるし。
「わかったから、落ち着いて……。リードは覚えてない?昔二人で泥でいろいろ作ったのを」
「あー……なんとなく?あの大雨で何もできなかった日の?」
「そうその時の!で、その感じを思いだして土を手でこねてそれを魔法でやるって感じで作るんだよ」
「なるほど!そういう感じにすればいいのか」
「私には全然分からないわよ!」
「じゃあ、フィーは今からでも土をいじれば……」
「いやよ汚れるから」
その答えに乾いた笑しか出てこない。フィーらしいと言えばそうなんだけれども、魔法の主体は経験とか体験したことだし。
彼女のそれはわかってるだろうから、どうしても出来なければ自ら進んでするだろう。でなければ
「私は絶対土なんて触らずにやって見せるんだから!」
そう言い、彼女は寮へと歩き去っていった。どうやら、機嫌は直ったみたいだ。
その次の日、木の魔法はリードが第二の課題である二個同時に成長させるという難しいのを成功させていた。
魔法の課題は第二課題は大体同じで雷だけが違う。二つ同時というのが基本。そして、木の第三課題……再生。
枯れてしまった植物を元の姿に戻すという今まで以上に魔法の操作要求が高く、大変な作業。
今まで木の課題に苦戦していなかったリードですら頭を抱えるほどのものだった。
どうすればいいかのコツを聞いてみたが、具体的な事はわからないという。なんとなくわかる。ずっとかかわってきたものだからと。
「そういえば、フィーはなんでできるの?」
「私はお花とか育ててるし」
「土触ってるじゃん……」と小声でつぶやく。
「なんか言った?」
「いやなんにも」
そんな参考にもならない話しはさて置いて、雷の授業は何も成果を得られぬまま一週間が終わりを迎えた。
魔眼の五星天 黒真㐬兎 @kuroma_rukuto
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