チート魔王〜外は私で中身は俺で〜

第43話 魔王だって怒りますよ？

「まず、作戦タイムをくれた事、感謝する。」

「どういたしまして。」

「次に、ここが貴国の領空だと知らずに飛び回った事、謝罪する。」

「了解。」

「そして、もし、、もし、可能であれば、、いっ、、いっ、、

青竜はもの凄く言いづらい事を口にしたいらしい。

「い、一発ギ、、一発ギャ、、

ほらほら、そこまで言ったんだから一気に言っちゃいなさいよ！？

君らが生き残る唯一の道なんだからさーっ！？

あ、もちろんウケた奴だけしか見逃さないけどね？

「いっ、一発ギャクテン！魔法禁止のタイマン勝負にしてくれないだろうかっ！！？」

「、、はへ？」」

俺とルシフルは、揃って間の抜けた声を出した。

場違いなセリフを楽しみにしてたのに、期待ハズレすぎて、マヌケボイスだって出ちゃいますよ！！

「いや、こちらの勝手な我儘が通るとは思っていない。だが、戦力差は明らか。おそらく魔法禁止ルールでもそれは覆らないだろう。」

「、、、。」」」」」

青竜の代表者が口にする言葉を、悔しそうな顔で俯いて聞いている部下竜たち。

「だが、貴国の領空というのを知らなかったのも事実。青竜族・緑竜族共に正式に謝罪したい。なので、私の命でこの場を収めて頂きたく！」

「あー、、要は初めから勝つ気のない勝負して、自分は命を落とすが部下たちは見逃してくれって事かな？」

「その通りだ。」

「うむ。命をかけて部下たちを守る気概、敵ながら天晴れなのじゃ！！ワカバよ、見逃してやっても良いのではないかのぅ？」

まるで俺が悪者みたいな言い方っ！ルシフルの方が積極的に殺してたからね！？

「はぁ〜〜、分かったよ。でも魔法禁止タイマン勝負はしてもらう。そっちのお前と、後お前。」

俺はめちゃくちゃ敵意剥き出しで睨んできている2匹を指差し、タイマン勝負の相手に指名する。

「こんなちんちくりんに、勇敢なる竜族が頭を下げる必要なんかないっス！班長、俺がこのちんちくりんをミンチにしてやるっスよ！！」

「ははっ、面白い。そっちのお前も口上があるなら言っとけよ？最後の言葉になるんだから。」

「その言葉、そっくりそのまま返してやろう。このオレ様に勝てる気でいる、頭の中お花畑なゴミ虫め。」

「よし、それが遺言でいいな？魔法禁止とは言ったが、俺は魔法を使わないと飛べないからな。それだけは勘弁してもらおう。その代わり、俺も素手でやってやる。2匹同時でも良いぞ？ほら、来いよ。」

クイックイッと馬鹿にしたような手招きをして、2匹を煽ってやる。

ミンチ青竜とお花畑緑竜は顔を向き合わせ、それを合図とし同時に襲いかかってきた。

さて、どうしてやろうか。

殺すだけなら簡単。俺に向かってきている鋭い爪に、ちょこんとパンチしてやれば破裂するんだから。

しかし、この2匹はその命を代償に、魔王である俺を言いたい放題言ってくれたんだ。

一瞬で終わらせるのはダメ、収まらない。

、、俺の気が収まらない！！

ええそうです、そうですとも！！

はっきり言って、かなりムカついてますとも！！！

殺してくれと懇願するほど痛めつけてから殺したい！！！

何か方法はないものか、、。

必死になって攻撃してくる2匹の間で、躱すことなく考える俺。

ああ、こんな奴らの攻撃なんて、避ける必要ないからね。どうせノーダメージだし。

まぁ噛みつきだけは躱すよ？好き好んで臭そうな竜の体内になんて入りたくないからな。

「はぁっはぁっ！！ど、どうして無傷なんっスか！？」

「はぁはぁはぁ！！ま、魔法で防御してるのか！？」

「いやいや。魔法は飛ぶ為にしか使ってないよ。単純な能力値の差だよ。君らのSTRが203と221。対する俺のDEFは7906。ダメージなんかあるわけないじゃん。」

「な、7千、、。」」

「そそっ。ちなみにSTRは12088だね。」

「う、、嘘だーーっ！！！」」

2匹は再び攻撃を開始する。

そこで俺も1つ思いついた。

前に母さんが俺を抱き上げたまま回転して、通行人に俺の足が当たってしまった事がある。

だけどその通行人は爆散せずに、普通に痛がっただけだ。

要は俺に攻撃の意思が無ければ、STRが加算されないという事。

ここまでは既に判明していた。

今から試すのは、これの応用だ。

攻撃の意思がないパンチ。

『言うは易し、行うは難し』ということわざが

あるが、まさにその通り。

パンチしてる時点で攻撃でしょ。っていう固定概念を打ち破る必要があるのだ！

しかも失敗できない1発勝負。

失敗したら死ぬ！、、相手が。

だが俺はやる！！やってみせる！！！

俺は2匹の攻撃にタイミングを合わせて、ヒョイっと回避し、ミンチ青竜の頭上に体を移した。

俺が消えたように感じただろうが、まぁそれは置いておこう。

ミンチ青竜の脳天に、手の甲をバシッと打ち下ろす。もちろんこのセリフも忘れずに！

「なんでやねーんっ！！」

ズドーーンッッ！！！！！

10m超の巨体が隕石の如く地面に衝突し、砂煙が舞い上がる。

視界が良好になると、そこには巨大なクレーターが。

その中心で、ピクッ、、ピクッ、、と小さく痙攣している青竜の姿を確認した。

「おおーっ♪破裂しなかったよ！！やはりツッコミは攻撃じゃなかったんだなぁっ♪」

「ぁ、、ぇ、、え？」

「え？って、、なんでやねーーんっ！！」

ズドーーーーンッッ！！！！ブチャァッッ！！

、、ふむ。今のはちょっとツッコミ過ぎたな。

地面との衝突に耐え切れない場合は、トマト祭りになってしまう、、と。覚えておこう。

俺は辛うじて生きている青竜の元に着陸した。

「ふむ。コイツもギリギリだったな。まぁ死んでなければオッケー。」

ヒールで回復してやる。砕けた骨はそのままに、最低限意識が回復する程度の応急処置だ。

「おらっ、起きろ！！」

巨体を揺すって意識の覚醒を促すと、意外にもすぐ目を覚ました。

「な、何をしやがっ、、グッ！！」

「全身粉砕骨折してるだろうから、喋るだけでも激痛が走るだろうね。今から君を虐待する。魔王にあれだけ悪態ついたんだ、後悔するといい。」

「ま、、ま、お、ぎゃああああっ！！！！！」

俺が青竜の指を1本引っこ抜いてやると、元気そうな叫び声を上げる。

どうやら掴んで引っ張るだけなら破裂しないようだ。まぁSTR12088で引っ張られたら引き千切れちゃうけど。

「ははっ！『おぎゃーっ』て、赤ちゃんじゃあるまいし。」

ブチブチブチィッ！！！

「ぎゃっぎゃあああっ！！！！」

「まだまだ元気そうだね！」

ブチブチブチィッッ！！！！！

「がぎゃぎゃーっ、がっがっががが！！！！」

「あら、腕ごといっちゃったか。しかも痛みで失神してるし、、。」

まぁ周りに降りてきた竜たちもドン引きしてるし、この辺で終わりにしといてやるか。

ルシフルまでドン引きしてたのには少し凹んだが、こういう事だってあるさ。

だって、魔王だもの。

俺は心の中で自分を慰めてあげ、ドン引きの原因に破裂パンチを喰らわす。

いつもならパンッと甲高い破裂音なのだが、巨体だからなのか、ボンッ！！という爆発音が終戦を告げる音となった、、。

「さて。今回はこのくらいで勘弁しといてあげるけど、次は気をつけるように！」

「わ、分かった。しかし、謝罪に来る時はどうすれば？」

「う〜ん、それなんだけどさぁ？謝罪の代わりに、赤竜たちに今後関わらないって事にしない？ぶっちゃけ、赤竜たちもジッポン王国の国民になったからさ、国民を守る為なら俺は無茶するよ？」

「し、しかし、、。」

「はぁ〜。おぬしら、分からんのか？妾達が今回見逃してやるのは全青竜・緑竜じゃ。当初の予定じゃと、おぬしらを殺したら赤竜の元住処を奪還しに行くはずじゃったのを、やめといてやると言っておる。」

「そっ。まぁ絶滅したいならそれでも良いけど、爆破させない方法を発見したから、次回は四肢を引っこ抜いてダルマにしてやる予定だからな？」

「なっはっは！それは笑えるのぅっ♪次回のコンセプトは『竜の肉ダルマ』で決まりじゃなっ♪」

「まっ、待ってくれ！分かった、そちらの要望は全て聞こう！！だから早まった真似はしないでくれ！！」

「分かれば良いんだよ。でも、1回で済ませなかったペナルティーは必要だよね？そうだな〜、、よし。明日から毎日兵士100人。人類枠に組みする種族の兵を100人狩れ。期間は10年。1日でもサボったら、絶滅さすからな。」

「ひゃ、、わ、分かった。必ず守ると誓おう。」

「よろしい。んじゃ解散かいさーんっ！気をつけて帰れよー。」

こうして青竜・緑竜の追撃部隊を追い返したのであった。

「ワカバよ。さっきのペナルティーとやらは、必要だったのじゃ？」

「ん？そりゃそうだよ〜。毎日100人を10年間。それだけで365000人も減るんだよ？まぁ86億っていう総数からしたら微々たる数だけど、チリも積もれば楽になるってね！」

「なるほどのぅ。同じように他の種族にもやらせれば、10年後には5人くらいしか残ってないかもしれんのっ♪」

それは期待し過ぎだと思うぞ？

「それじゃ、戻ろっかね？」

「、、まだじゃろ。」

「ん？何かやり残した事でも、、

「大アリじゃーっ！！その金属製の板は何じゃーっ！！？敵を追いかける変な筒も何じゃーっ！！？妾もその羽がよいのじゃーっ！！！」

ルシフルは俺の言葉を遮り、おもちゃ売り場で横になって手足をバタバタさせるガキになった。

世のママさん達は、この状況をどうやって乗り越えているのだろうか。

それはさておき、この可変翼が良いと言われても困ってしまうな。

ターボファンエンジンとセットじゃなきゃ飛べないんだぞ？

という事は、イメージするのにターボファンエンジンの説明をしなくてはならない訳で。

俺は飛行機とかを実際に見た事があるから、細かい作りまで知らなくても顕現出来たけど、『鉄の塊が飛ぶ？頭沸いちゃったのか？』って世界の人が顕現させるには、エンジンの仕組みを1から理解しないと無理だと思う。

ターボファンエンジンの説明なんて、一般市民にはハードルが高すぎるって！

さて〜、、どうしたものか。

地面に寝転がって手足をバタバタしているルシフルを見ながら、解決策を考える俺なのであった、、。