第1話
「姉御とデートに行けること、ほんと嬉しいっす!」
「デートではありません。貴女が停学中に捨ててしまったという勉強道具を買いに来たんです」
明日から停学が解けると嬉しそうに語る女の子を横目に、予め買うものをメモしておいたメモ帳を見ながら肩を撫で下ろす
・・・
・・・
待ち合わせをしたときは出社する社会人が駅に向かって早歩きをしていたが、すっかり赤く染まった太陽が見える夕方になっていた
全部買い揃え、明日の登校に間に合うことを確信した
「やあ、今いいかな?」
ひと段落付き、気を抜いていたのが災いした
鍛えているのであろう二の腕を見せつけるようなタンクトップを着た男二人が私たちの前に姿を現した
貼り付けたような笑顔を浮かべ、私の返答を確信しているようなその男たちに無性に腹が立った
疑問形で話しかけているのにも関わらず、断るわけないだろうというようなオーラがよく見える
先程までのどが枯れるのではないかと心配するほど喋っていた友人が今では、顔から火を噴くのではないかという表情で男たちを見ている。
色々な考えが頭の中を回っているがいつも通りの手でいなすとしよう
「はい、なんでしょうか?」
私が笑顔を見せると、私にとって聞き慣れたセリフを吐いてくる
「俺の妻候補にしてあげようじゃないか。君はまだ子供だが、将来はさぞ美人になるんだろうな。俺はあの名門一流大学に通っているし、妻の一人が一流企業で働いていてな、君が働くまでは金銭的な援助もしてあげよう!なんなら隣にいる彼女も一緒に援助してあげよう」
その大学の入学試験など男にとって無いに等しいだろうに
心の中で悪態をつくが、表情には出さない
私がこれからすることを見て、彼女は私のことを嫌いにならないかそれだけが心配だ
「まさか私を選んでくださるなんてとても嬉しいです!驚きすぎていったん母に連絡したいので、お返事は明日にお願いします!」
「よし!ならリイン先交換しようか」
「ええ、ぜひお願いします」
男はまだ話したりなそうにしていたが、今日は立て込んでいるといい彼女の手を取り足早にその場を離れた
「姉御、凄すぎます!自分感激しました!」
興奮したように迫ってくる彼女の顔を押しのけてスマホを操作する
何をしているんだろうと彼女は顔を覗き込んできた
「なんでリインでブロックしてるんですか!?」
「人のスマホを覗かないでください」
「姉御も喜んでたじゃないですか」
彼女にあんな男に興味はないと説明する
「〈男性特別優待法第1条〉って知っていますよね」
「知りません!!」
あまりに堂々と知らないと言い放つので驚きましたが、彼女にわかるように説明する
「後で精神的暴行を受けたと証言します」
「それ訴えられません?」
心配そうな表情を向けてくる
「なぜかは知りませんが、彼らの男性護衛官が近くにいなかったようなので、私と貴女が口裏合わせ証言すれば大丈夫です。そうすれば、彼らは一年間拘束ですね!まあ1週間の拘束は確定ですけど」
「男性のほうが権力があるのは馬鹿なあたしでもわかります。そうなのに本当に本当に大丈夫なんですか?」
安心して大丈夫だといい、彼女を優しく包む
「権力のある男性の中でも私の兄さんは最上位階級なのです」
そうなの!と言いたげな顔をこちらに向けてくる
「シスコンで変態ですが、それでも最高の兄さんですから」
貞操逆転世界に転生したけど、妹には逆らえません 藤宮さん @kasyumaru
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