第5話 神様の連られ笑い
「彼女の真似をしてみたくなったの」
そう言ってトウコは神様に刀を所望した。単なる刀ではない。あらゆるものを切れる刀だ。
「創造主との対決にとっておきたかったんだけどなあ」
「神様でしょ?また新しいのを創ればいいじゃない」
「それはそんなに簡単に創れないんだ。創造主の力も少し必要だからね。でもどうして刀が欲しいの?僕ならあのビルを潰すことも、この世界自体を創りかえる事も簡単に出来るのに」
「それじゃ意味がないの。『困ったときには神様に頼めばなんとかしてくれる』っていうのも旧時代の価値観の呪い。少なくとも私はそんな呪いに頼らずに自分で切り開きたいの」
「頼んでいるっていうことには変わらないのに・・・。やっぱり人間は意味がわからないな」
肩をすくめる神様を横目に、人払いをさせた都心の、御子神コンツェルン本社ビルの威容を一望できるビルの上から、トウコは裂帛の気合と共に刀を振るう。
刀から放たれた不可視の斬撃は御子神コンツェルンの本社ビルを直撃し、十五階から二十階にかけて切り裂く。
「てい!」
掛け声と共に放たれる幾筋もの斬撃は荘厳な本社ビルを瓦礫の山へと変えていく。轟音と土埃が辺りに満ちていく。
「こんなことして大丈夫なの?周囲の人払いはしたけど、あのビルには人がいるままでしょ?」
「許可は出ているわ。御子神コンツェルンの上層部は誰もがソノコ部長と大差ない、人でなしばかりだそうよ。遠慮するな、叩き壊せ、ですって」
「―でもこの後始末、どうするの?」
「そこは神様の仕事でしょ?」
やれやれと肩をすくめるリヒトに、トウコは年相応の気持ちのいい笑顔で微笑む。
気のいい神様は連られて笑ってしまい、これは自分の負けだな、と悟ってしまう。
XXX@かみさま の連られ笑い 日出 隆 @takataka2
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