美少女ゲーム（仮）

第1話

部長「今ソシャゲってのが流行ってるんでしょ？可愛い女の子がたくさん出るやつ。それウチでもやろうよ！儲かりそうだし！」

そんな部長の無茶振りに応えるため、課長はオタク社員A・Bを会議室に招き、「第一回美少女ソシャゲ（仮）制作会議」を開いた。

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課長「えー、という訳でまずは美少女ソシャゲの肝である『魅力的な美少女キャラ』の大まかな設定を決めていきたいと思います…とりあえず胸の大きい女の子にネコミミ付けとけばいい？」

社員A「お言葉ですが、余りにも安直かと…」

社員B「それに昨今の情勢を鑑みるに、盛るべきは胸ではなく太腿かと…」

課長「ふともも…？」

社員B「ええ。昨今の『売れるソシャゲ』には必ず『ムッチムチの美少女』がいると言っても過言ではありません。こちらをご覧ください」つスマホ

課長「どれど…いや、太えって！！！」

社員A・B「「太くねぇって！！！」」

課長「いや、これはどう考えてもおかしいだろう！？真ん中の娘はウェストよりも太腿のほうが太いし、右の娘のホットパンツなんて今にもはち切れそうじゃないか！？」

社員B「これが今の『勝てるソシャゲのキャラ』なのです。『巨乳にネコミミ付けてにゃんにゃんさせとけば売れる』という安直な考えは今すぐ捨てて下さい。」

課長「なんで俺こんな本気で怒られてるの…？」

社員A「しかしですよ、確かに現状はムッチムチの太腿の女の子のキャラが中韓のソシャゲで大人気です…しかし、それで本当にいいのですか！？かつて日本は『萌え』概念の先進国でした！！『貧乳はステータスだ！希少価値だ！』という名言も大陸で産まれたものではありません！！我が国のオリジナルです！！」

課長「改めてとんでもねぇ国だな」

社員A「それが大陸の潮流に呑まれて良いのでしょうか！？否！！断じて否！！！日本国は、今一度アジアに、いや世界に『薄い身体の侘び寂び』を提示する必要がある！！」

課長「急に極端に強い思想をぶつけるなよびっくりするだろう。」

社員B「…聞こう。」

課長「お前はお前で何で急に強キャラ感出してんだよ」

社員A「つまり…『低身長ガリガリ貧乳ジト目そばかす三白眼ギザ歯陰キャヒロイン』です」

社員B「『低身長ガリガリ貧乳ジト目そばかす三白眼ギザ歯陰キャヒロイン』！！！！」

課長「え？低身長…ガリガリ…貧乳…？何…？？」

社員B「確かに陰キャ美少女キャラには一定のニーズがある…！いけますよ！これ！！」

課長「ちょ、ちょっと待ってくれ！！そんな陰気な女をメインにして大丈夫なのか！？」

社員A「分かってないですねぇ…美少女ソシャゲのメインユーザーは我々と同じ『人と接するのが苦手なモテない若年男性』です。陰キャヒロインはむしろ親近感があって魅力的なんですよ！」

社員B「その通り！『移動教室は誰よりも早く移動して寝たふりしてた』とか『先生に「二人組作ってー」って言われて最後まで余って先生とペア組んだ』とかそういうエピソードが共感と愛着を産むんですよ！」

社員A「昼休みに小難しい哲学の本とか読んで、自分を棚に上げて周りを見下してたりするとなおいいね！」

課長「それお前らの実体験…？笑顔でそんな話するなよこっちが泣きたくなってくる…よし！分かった！メインヒロインは君らを信じてそれでいこう！…ただ、次のヒロインはもう少し大衆ウケする王道のやつで頼むよ…？」

社員A「ありがとうございます…！それじゃあヒロインの大まかな設定が決まったし、次は王道の…」

社員A・B「「ヒロインの母親！！！」」

課長「待て待て待て！！！！普通次はヒロインの親友とか肉親にしても姉か妹だろ！？なんで母親なんだよ！？」

社員A「今や最もえっちなキャラクターはヒロインの母親なのです。それがこの現代社会なのです！」

課長「こんなの絶対おかしいよ…こんな世界間違ってるよぉ…」

社員B「現に『ヒロインの制服をヒロインの母親に着せるソシャゲ』が大ヒット中です。こちらを。」つスマホ

課長「うわぁ…なんだこれぇ…ナニコレェ…」

社員B「どうです？なんだかとってもえっちでしょう！？」

課長「確かに『たまたま一緒にいた女の人と仲良くなってえっちなことする混浴のお風呂屋さんのイケナイコース』を選んだ時のようなドキドキ感はあるな…！！なるほど！！ヒロインの母親！！いいじゃないか！！私も古い考えは捨てよう！！どんな新キャラもどんとこいだ！！さぁ、次のキャラを考えてくれ！！」

社員A「…じゃあ、メインヒロインの弟の『メスガキ陽キャ男の娘』を…」

課長「生意気言ってすみませんでした。もっと優しい性癖のヤツでお願いします。」

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こうしてリリースされた「僕と君の放課後〜文化系帰宅部活動記録〜」は、リリース当初こそそれなりに話題になったものの、杜撰な管理体制が災いしてサービス開始３日で長期メンテナンスに入り、その後サービスが再開されることはなかった。

それはそれとして、エロ同人はそこそこ出た。

〜〜〜〜〜〜おしまい〜〜〜〜〜〜