仲直り
無事に手紙を届けて神世から帰ってきてホッとする。初仕事は緊張して長く感じたがこちらでは、それほど時間が経っていない。
日も長くなってきて外はまだうっすら明るい。
神社に足取り軽く戻ると鳥居の前に見慣れた後ろ姿があった。
「桐矢…?」
その呼び掛けに桐矢はビクッとして振り返った。
「なんだ、そっちにいたのか…」
『仲良うな』 田の神様の言葉が思い出されていつも通り声を掛ける。
「どうしたの?部活見学できた?」
「あ?…あぁ、雅は…今日から仕事だったんだな」
雅が巫女服なのを見て家業を継いだ事を理解したらしい。
「そう!今日からだったの。…だから…一緒に部活見学できなくて……ごめんね」
素直に謝る雅に桐矢が慌てる。
「いや、俺の方こそ仕事って知らなくて…きつい言い方して…ごめんな」
お互い謝って、これでいつも通り。喧嘩はよくするけど、こうやっていつもお互い謝って仲直りする。桐矢もこのままじゃいけないと思って学校帰りに神社に寄ってくれたに違いない。
初仕事も無事に終わって、桐矢とも仲直り出来て晴れやかな気持ちで神社に帰ってくることができた。
桐矢も仲直りができて安心したのか表情明るく、暗くなる前にと家に帰っていった。
「雅!」
帰って行く桐矢を見送っていると後ろから祖母が呼ぶ声がした。振り返ると祖母とでんでん神社の神様、でんでん様が雅の帰りを待っていた。
「でんでん様、おばあちゃん、ただいま!」
でんでん様が神社で姿を見せてくれるのはとても珍しい。初仕事をこなした雅の為に駆けつけてくれたのだろう。嬉しくなってでんでん様に抱き付く。
「でんでん様!無事に巫女郵便できました!」
飛び込んできた雅を抱きとめ、でんでん様は優しく頭を撫でてくれる。
「おかえり。よく頑張ったね。手紙を届けてくれてありがとう」
「はい。田の神様、近いうちに遊びに来るって言ってました」
田の神様が届けてすぐに手紙を読むとは思ってなかったでんでん様は思わぬ形で返事がもらえた事に喜んだ。
その笑顔が見れて雅は人の気持ちを伝える仕事ほやっぱりステキだなと改めて思った。
今日が仕事始め。これから、いろんな人のいろんな想いをもっと届けていこうと意気込む雅だった。
でんでん神社の巫女郵便 kanata @takanakanata
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