第7話 事件がもたらした結末
(ジュンさん、本当に素敵!)
ボス…らしき物を倒した後、なぜかダンジョンの貯蔵庫は正常に機能し始めたらしい。
原因は不明だが、ひとまず安全性が保証され私は無事に定時に上がることが出来た。
色々疑問は残るが…ジュンさんのコンサートに間に合ったので、終わりよければ全て良し。
それに今回の件であの魔具オタクに魔具の力は絶対ではないと教えることができたのは大きな収穫だ。
これで魔具が更新される頻度が減ると良いが…
そんな事を考えつつ出社した私は、張り切って魔具を起動させる。ジュンさんのおかげで戦闘準備は万端。
キビキビとした動きで最初に連絡用の魔具を起動させ、私は固まった。
「…現在の魔具の問題点について?」
最新の連絡事項のタイトルを読み上げる。
まだどんな内容なのか想像も出来ないが、連絡事項を流した人間はレン。嫌な予感を感じながら読み進める。
要約すると、昨日の件の改善案として貯蔵庫から供給する魔具ばかりを利用すると貯蔵庫に異常が起こった時に問題になるので、半数は魔具自体に魔力を貯めておける物にしようという内容。
そしてその変更に伴い、事務所の魔具に大々的な改変を行うらしい。
つらつらと書かれている文章を読むたびに『そういう問題じゃないだろう!』と怒りが湧いて来る。
今回の原因の根本は魔具に頼りすぎている点であって、魔具の特性を変えても局地的な問題にしか対応出来ていない。
その上、改変が行われる魔具は私が仕事で利用している魔具が大半だった。全文読み終えた私の手は小刻みに震える。
ジュンさんに貰った戦意はあっという間に奪われた。
「おはよう!サヤ…さ…ん」
「……おはようございます。ヒロさん」
出社してきたヒロは私の様子に全てを察したらしく、罰の悪そうな顔をして頭をかく。
「えっとね。サヤさんが帰った後、もちろん自身の能力を上げるのも大切だって話になったんだけど…魔具の弱点も事実だなって話になって…個人の戦力アップには時間がかかるし、元々古いシステムを長い事使っていたから、この機会に一新しようってことになって…」
「…」
「おはようございます!あっ、サヤさん!昨日色々考えて、今後は貯蔵庫が機能しなくなっても、ある程度の日数は安全が保てるような魔具開発をする事になりました!時間は多少かかりますが、全て入れ替えられたら今回のようなことは起こりません!期待してください!」
そんなわけないだろう。世の中に絶対なんてない。
しかもレンの事だ。全ての魔具を入れ替える頃には、先に入れ替えたシステムをまた入れ替えるに違いない。
私にとってデメリットだらけの話を得意げに報告するレンに苛立つが、社内で決定した以上何を言っても無駄。
それを裏付けるように、ヒロが背後から憐憫さを含んだ顔で近づいて、諭すように口を開いた。
「大丈夫。サヤさんならきっとすぐ覚えられるよ」
励ましの言葉に私は力なく笑い、心の中でため息を吐く。
(どうか世界中の魔具がこれ以上発展しませんように…)
無理な話だとわかっていても、そう願わずにはいられなかった。
便利すぎる世界は逆に不便だと思うのは私だけですか? ゆずもも @yuzumomo_wolf
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