第6話 爆速攻略
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
粉砕された扉の奥から響いて来る悲鳴。
魔物とは違う人間のような声に、ヒロとサヤと共にボス部屋に入ると、部屋の中央で古風な洋服を着た男が蹲っていた。
なぜ誰も居ないはずのダンジョンに人間が?と思ったが、男の頭部にはツノが生えていて、手を当てている額からは皮膚がボロボロと剥がれて落ち、黒い粒子に変化して空気中に消えていく。
それは魔物が消滅する時とよく似ているが…こんな人型の魔物の存在は聞いたことがない。
「くそっ、我の結界を打ち破るだけでなく、一撃で魔族を消滅させるとは…この時代にここまでの最上位魔法の使う人間が残っていたとはな…」
正体を聞く前に恨みがましい視線をサヤに向けて、完全に消えた謎の人物。
消滅する前の敵意は凄まじく、恐ろしさから俺とヒロは互いに強張った顔を見合わせるが、サヤだけは腕時計を確認した後に満面の笑みを浮かべた。
「無事にダンジョンクリアですね♪さぁ帰りましょう!」
嬉々とした声を上げ、何事も無かったかのように出口へと向かうサヤ。
今起こった事よりもサヤの態度に恐怖を覚えていると、ヒロがサヤを引き留めるように恐る恐る声を上げた。
「あの…今のって…本当にボス?」
「ボスです」
顔だけこちらに向けてにっこり笑顔で断言したサヤ。正直怖い。
「でも…さっき魔族って…」
納得いかず俺もおずおずとヒロの言葉に付け足すと、サヤは笑顔を作りながら、でも有無を言わさぬ視線を俺たちに向けた。
「魔族って名前のボスなんじゃないですか?とにかく帰りますよ?」
「「…はい」」
そんな事はないだろうと否定したいが、背筋にゾワッとしたものを感じて止めた。それはヒロも同じだったのか、反抗する事なく頷きサヤの後を付いていく。
一方で軽快な足取りで出口へ向かうサヤは、ダンジョンの出口付近になった所で、明朗な声で呟いた。
「それにしても、こういう時困るので、やっぱり魔具だけに頼るのは良くないですね」
そんな事はない。今回は魔具の選び方が悪かっただけで、魔具は最強だ。
サヤは魔具を嫌煙している節があるが、俺にはそれが理解できない。しかし、アナログを好む彼女の存在は俺の仕事に対するやる気を上げてくれる節もある。
(魔具嫌いのサヤさんが喜ぶ様な魔具を作ろう!)
ずっと掲げている目標を再度心の中で呟き、気持ちを切り替えようと試みるが、やはり先程の光景は忘れられず足取りは遅いままだった。
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