都合の悪い発明 (短編)

藻ノかたり

都合の悪い発明

ポッテクラド博士は、闇夜を走る。研究成果の詰まったカバンを持って。


彼の発明は一部の人間の不興を買った。そしていま、その連中に追われている。捕まればタダでは済むまい。


彼の発明とは何か。


それは、天気を思い通りに操作する装置である。これが世界中で実用化されれば、干ばつや洪水に対し、絶大な威力を発揮するだろう。それどころか、常に天気を理想的にコントロールする事が出来るのだ。


誠に良い発明であると思われるかも知れないが、世界平和より自分たちの利益を優先する輩はいるものである。


博士は、遂に路地裏へと追い詰められた。そして銃弾を撃ち込まれ、カバンを奪われる。


「お、お前たちは何者だ。天気を操って、世界征服を企む悪の結社か? それとも、作物の先物取引で暴利をむさぼる経済マフィアか?」


博士は虫の息のなか、彼らに尋ねた。


「ふん、冥土の土産に教えてやろう。俺たちは”気象予報士”だ。この機械で予め天気が決められてしまったら、俺達みんな失業してしまうんだよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

都合の悪い発明 (短編) 藻ノかたり @monokatari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ