第2話:家出せし謎の実力者

 ギルド近くの路地裏で女騎士に対して少年は頭を下げた。

「信じてくれて、ありがとうございます! そして、僕のせいで迷惑を掛けてすみません!」

「気にする事はない。私はただ困っている人を放っては置けないだけだ。それはそうと自己紹介がまだだったな。私の名はグロリア・アニムスアニマだ、よろしく頼む。」

「はい、よろしくお願いします。僕の名前はリオス・エルトールと申します。以後お見知りおきを。」

 丁寧な挨拶で交わされ、熱心な目線で見つめるリオスにグロリアは顔を赤らめる。

「ところで、この冒険者の街、ドリフトのギルドを使うのは初めてなら、どこでギルドカードを? ああ! いや、別に疑ってる訳じゃ…」

「ああ、自分の故郷から幼馴染のみんなと一緒にギルドカードを発行したきりなので、あれから半年になります。」

「ん? それなら、その幼馴染たちはどうしたんだ? まさか、はぐれたのか?」

 幼馴染のことを聞かれたリオスは顔を俯き、気まずそうに暗い表情をする。

「いえ、出て行ったんです。幼馴染のパーティーと喧嘩して…」

「すっ、すまない…いやなことを思い出させて…」

「いえ、僕が悪いんです。僕は村にいた頃はみんなに馬鹿にされて、一緒の幼馴染さえもそれを揶揄われて、情けなくなって、つい喧嘩をしたんです。」

 寂しそうな表情をするリオスを見たグロリアは放って置けず、親切心が動かされた。

「リオス、君が良ければ、私がパーティーに…」

 パーティーになると言いかけようとする前に何かの爆発音が鳴り響く。二人は轟音の方へ目を向けば、街の城壁の方に火の手が上がっていた。

「なっ、何が起きたんだ!?」

「行って見ましょう!」

「ま、待て、リオス!?」

 リオスは城壁の方へと向かい、グロリアも彼の後を追いかけた。


 リオスたちが来てみれば、城壁が大穴を空いて、破られ、そこから、邪眼大蛇イヴィルアイサーペント悪魔熊デーモンズベアー小鬼王ゴブリンロード血狂大狼ブラッディヴォルフなど無数の高ランクな魔物が入って来ていた。

 衛兵はもちろん、駆け付けた冒険者までも餌食になっていた。

 ある衛兵は血狂大狼ブラッディヴォルフに腑を抉られ、臓物を曝け出され、

 ある冒険者は小鬼王ゴブリンロードが持つ刀や槍で串刺しにされ、

 ある一般人は邪眼大蛇イヴィルアイサーペントの邪眼によって石化されていた。

 そんな地獄絵図の中、グロリアはついさっきまで自分を追放した冒険者たちのパーティーを発見した。

「オルト、ミーナス!?」

 先程の武闘家のオルトは四肢を折られ、魔女のミーナスに関しては膝を地に落としながら、失禁し、命乞いをしていた。

「いでぇよぉー、だずげでぐれぇー!」

「許して下さい、許して下さい、許して、許して、許して…!」

 グロリアはそんな二人を助けようと駆け寄ろうとするが、二人の前にいる悪魔熊デーモンズベアーを見て、足が竦んだ。

 悪魔熊デーモンズベアー、双角を持つ赤紫の大熊で、悪魔の様に笑い叫びながら、森一帯を壊滅させた伝説の魔獣だった。

 そんな危険を通り過ぎた死の権化が二人を襲おうとするのを分かっているはずなのに自分勝手な恐怖で動けないグロリアは己の薄情さを恥じた。

(くそ、動け! 動かないと、二人が、オルトとミーナスが!)

 グロリアの健闘虚しく、オルトとミーナスに対して悪魔熊デーモンズベアーの剛腕の巨爪が振り下ろされようとした。

 はずだった。

「経験値…」

 悪魔熊デーモンズベアーの剛腕が突然現れたリオスの短剣によって断ち切られていた。

 虹色に輝くその短剣は神話の遺物にしては極端に地味すぎた代物だったが、破壊力は抜群だった。

 オルトやミーナス、そして、遠くで目撃したグロリアは思わず、呆然と開いた口が塞がらなかった。

 



 

 

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嫉妬狂いの冒険者、チーマ(チートMAX)な仲間達と真の戦いに挑む! @kandoukei

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