第1話:ギルドの喧騒

「グロリア、テメェはクビだ!」

「何故だ!? 私が何かをしたというのか!?」

「あんたが私たちのやる事成す事に一々文句言うからよ!」

「何が規律正しくだ、何が品行方正だ! うんざりなんだよ、うぜえオカンかよ!」

 白銀の甲冑を身に纏った、金髪のポニーテールと青い瞳を持つ女騎士が赤い武闘服を着た赤髪と赤い瞳、褐色肌を持つ男性と桃色のツインテールと緑の瞳を持つ魔女との言い争いがギルドの中で繰り広げられた。

「というか、私たちは他のパーティーと組む事になったから、口先だけのあんたはお払い箱よ!」

「じゃあな、次に組む時はその減らず口を治せよな。まぁ、お前には無理だけどな。ギャハハハハハ!」

「待て、お前たち…くっ、クソ、私はただ、良かれと思っただけなのに…」

 二人の冒険仲間は女性聖導師や重騎士、盗賊のパーティーの下へついて行き、女騎士を置いて行った。

 置いてかれた彼女は膝を屈し、打ち拉がれる中、受付カウンターの方では喧騒が賑わっていた。

「信じて下さい、僕は噂級ルーモアの冒険者なんです!」

「嘘付け、表記が1しかねぇじゃねぇか! レベル1の冒険者は口無級ノートークしかありえねぇんだよ!」

「それはギルドカードの表記に問題が…」

「何だと、ギルドの不手際にさせるつもりか!? なんて、意地汚い奴だ! 恥を知れ!」

 黒髪と赤と翠の瞳を持つ少年が受付担当の屈強で嫌らしいギルドの男性職員と言い争っていた。

 彼の後ろでは順番待ちの荒くれた冒険者たちが苛立っていた。

「おい、てめぇ! いつまで、待たせやがる! こいつが嘘吐きならさっさとギルドから出て行かせやがれ!」

「そんな…嘘じゃありません!」

「五月蝿え! ギルドカードに文句があるなら、さっさと破いてやるぜ!」

「やめて下さい! そんなことしたら、冒険者になれなくなるじゃないですか!」

「黙れ! てめぇのような屑が、居ていい訳ねぇだろうが!」

 ギルド職員が少年のギルドカードを破こうとすると、先程の女騎士が職員の手を強く握り締め、破くのを阻止した。

「痛だだだだだ!? おい、お前、何やってんだ!?」

「少年の言い分も聞かず、大切なギルドカードを破こうなど、言語道断だ! この不躾な職員は私が成敗してやる!」

「はっ、離せ!? いがぁぁぁぁぁ!?」

「何をしている!」

 ギルドの階段から眼鏡をかけた坊主頭の男が現れた。彼は紫のスーツを着て、階段から舞い降りた。

「ギッ、ギルドマスター! ちょうど良かった! 何とか言ってくだせえ、不正にされたギルドカードを破こうとしたら、この女が俺の手首を…!」

「この男が少年の言い分を聞かず、罵り、あまつさえ、ギルドカードを勝手に破く所業は見過ごせません!」

 ギルドマスターと呼ばれたその男は一呼吸を置いて、目を瞑って、熟考し、目を見開いて、判決を下した。

「そのギルドカードは私が預かろう。慎重な確認もなしにギルドカードを破くのは問題だが、理由があっても、ギルド職員に暴力を振るうのも問題だ。両方はギルドカードを調べ次第、沙汰を言い渡す。解散!」

「うっ! …はい、すんませんでした。」

「こちらも勝手な真似をして、すみませんでした。」

 ギルド内の喧騒は止み、冒険者やギルド職員は元の仕事に戻った。

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