第3話 真実
手に汗が浮き上がり、スクロールする指が滑る。鼓動が大きくなり口を開けないと呼吸が苦しい。
気づいていたのか。保身に精一杯で私たちの動向を追う余裕などないと思っていたが油断してしまった。ボスママを辞任しなかったのはこの切り札があったからというわけか。暑くないのに、こめかみから冷たい汗が走った。
顔を上げると家の前の道に日菜子ママが突っ立って、私を見ている。片方だけの口が吊り上がっている。歪んでいると言った方が良かった。
「あんたの不倫は真実よね。旦那も白状したから! あっはははははははははは! ざまあみろ」
「糞が!」
私の声は伝線に止まっているカラスを飛び立たせた。日菜子ママの胸倉を掴み、怒号を浴びせる。日菜子ママはいやらしく口角を歪ませて黄色い歯を見せつけている。
日菜子ママの背後の家の二階の窓から私派のママが見下ろしている。周りの家を見ると、両派閥のママたちは同じように顔を覗かせていた。その批判的な視線は私か日菜子ママのどっちを指しているのかわからない。
ママ友総選挙 佐々井 サイジ @sasaisaiji
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