第2話

今日はなぜか不思議な事がいっぱい起きた。


トイレから教室に戻ったあと、苦手だった英語が母国語かのように理解できた。

その次の数学は三角関数が全て暗算で解けたし、最後の総合は早送りしたかのように2倍速で時間が過ぎた。


不思議な事が起こりつつも全て自分に都合のいい結果になっているので問題ないが、思い通りの結果になり過ぎて、夢の中にいるのか、あるいはいっそ自分はもう死んでいるのではないかと疑ってしまうくらいだった。


ーま、死後の世界がこんな風に思い通りになるなら、死ぬのも悪くはないかなー

そんな風に考えてしまったのが間違いだったのかもしれない。


帰り道、横断歩道を渡っていると、大型トラックが猛スピードで迫ってくるのが見えた。

人間、想定外の事が起こると思考が一旦停止してしまうらしい。

このままここに立っていたらトラックに轢かれる事を理解した時には、もう逃げるのが間に合わない位置までトラックが迫って来ていた。


ーああ、そうか、死に際に束の間の夢を見させてくれたんだなー

今日1日の不思議な出来事をそう理解すると同時に、発せられた甲高い叫び声が聞こえた。


そういえば、今俺の近くには同じ学校の女生徒が1人歩いていたはずだ。

知り合いではないが、着崩していない制服と、ピンと伸ばされた背筋から、真面目で実直な人なのだろうということが感じ取れる子だった。

できうる事なら彼女には何も被害がない事を願いたい。


願いがなんでも叶うなら、この大きな鉄塊を、いっそ受け止めてしまうくらいの力があればと思いながら、肌に触れる鉄の冷たさを感じた。

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転生とかしてないのに突然なんでもできる力を与えられて困ってます @tukimiyashin

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