マリア・ユートピアの場合

「おかしい!どうしてよ!」


マリア・ユートピアは怒りに震えていた

それもそのはずだ。

乙女ゲーム『前世の記憶を思い出しました』の世界にトリップしたと気づいたのは数年前。前世の記憶を思い出したマリアはこの世界はやりこんでいたゲームだとすぐに気がついた

このゲームはいわゆる美醜逆転ゲームで見目麗しい男性たちが虐げられている世界でそれこそマリアのごとく優しさをもって生まれもち虐げることなく生きてきた主人公に前世の記憶が蘇ることによって恋愛対象としてみるようになるといったものだった

攻略対象は第一王子であるレーイ、宰相であるミネルバ、学園の先生であるライト、騎士を目指しているユークリウス、幼馴染ポジションのレーライ、隠しキャラとして学園長のメイデァとメイドに扮しているルギア

彼らはそれぞれに自分のルックスにコンプレックスを抱いておりその外見から虐げられてきた者たちだ。それを優しく癒して愛らしい笑顔で魅了していくのがヒロインの役目なはずなのに

今マリアの傍には誰もいなかった

数週間前からなぜかマリアが攻略対象と会おうとすると別の攻略対象がやってきて好感度が下がっていくのだ

今では一人もいない



フラグは踏んだはずだった

出来る限りイベントは回収して、一人を上げすぎるとその人のルートに入ってしまうからと好感度調整も行った

一時はすべてが順調に向かっておりハーレムも目と鼻の先だった


あの人、ロイに会うまでは


第二王子であるロイはゲームでは小太りのそれこそ逆転していない世界観で美しいとされる風貌だったはずなのに現実の彼はとても素敵に育っていた

文武両道、剣の腕もさることながら成績も優秀で物腰も柔らかい。俺様性格のレーイとは正反対の王子様といえるべき性格はゲームと乖離していたけどそんなことすら気にならないくらい素敵だった

だから、話しかけたり好感度を上げようと頑張ったのに。ロイは反応しない。ロイが反応するのはいつだって悪役キャラでロイと並んで主人公の邪魔をするキャラであるレデアナの前だけだ



あぁ、そうだ

ふと天啓が下りてきたかのように頭がすっきりする

きっとレデアナが悪いことをしているから攻略対象もロイも私の傍に寄り付かないのだ

今までうまくいかなかったのもレデアナのせいだ


そう考えると頭がやけにすっきりしてやるべきことが見えてきた

まずはレデアナの排除をしなければいけない

それをすればきっとロイも私の隣でほほ笑んでくれるだろう


それこそたった今言っていた邪魔とされる行為は全てレデアナが気にしているという理由だけでマリアの存在を許せなくなったそのロイが行ったこととも知らずに彼女は怒りに震えてその一歩を踏み出す

地獄へ向かう一歩を確実に






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美醜逆転世界で前世の記憶を思い出しました!をお読み頂きありがとうございます

思っていたよりも反響があったため長編化することにしました。明日から3話分一括公開、その後7日続けて連日公開予定です。その後の公開は間隔をあけてになる予定ですが是非お読みいただけると幸いです

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